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過労死と損害保険(使用者賠償責任保険)

過労死と言えば1991年8月に社員が自殺した「電通事件」が思い起こされます。1990年4月に入社した男性社員は慢性的な長時間労働の末にうつ病を罹患して自殺。最高裁まで争われましたが、最終的には会社側が賠償金として約1億6800万円を支払い和解となりました。

また、2024年3月には、造船会社に勤務していた男性社員が、3年前、海外赴任先のタイで自殺したのは慣れない業務による負担や上司の厳しい指導などで精神疾患を発症したことが原因だとして労災認定された旨の報道がされました。

過労死とは、長時間労働や過重労働によって引き起こされる脳・心臓疾患または精神疾患により亡くなってしまうことをいいます。
具体的には、過労死等防止対策推進法2条によって、以下のように定義されています。

業務上の過重な負荷による、脳血管・心臓疾患が原因となる死亡
業務上の強い心理的負荷による、精神障害が原因となる自殺・脳血管疾患・心臓疾患・精神障害が原因となる死亡

労働基準監督署が労災認定をする際に、脳血管疾患や心臓疾患が過重な労働により発生したのかを判定する際に用いられる、厚生労働省が定める基準が「過労死ライン」です。
「この基準を超過して長時間労働をすると、自然経過を超えて脳や心臓にダメージが発生し、過労死に至るおそれがある」と考えられています。

過労死の労災認定は、身体的負荷をもたらす異常な事態、短期間の過重業務など、さまざまな判断基準により判断されますが、「過労死ライン」を超えて労働していた状態で脳血管疾患や心臓疾患を発症した場合、原則として労災認定を受けることができます。

「過労死ライン」の具体的内容としては、
発症1か月前から発症まで時間外労働時間※が100時間もしくは、発症2~6か月前から発症時点までそれぞれ1か月あたりの平均時間外労働時間※を計算し、いずれか1つの期間で80時間を超えている場合には、過重な労働と脳血管疾患や心臓疾患との関連性が強いと判断されます。
※週40時間を超える労働時間を指します

「過労死ライン」を超えていれば、テクニカルアウトで労災認定されますが、「過労死ライン」を超えていなくても、様々な要因で労災認定される可能性もあります。

労災認定されれば、「訴訟大国」になってしまった日本では、遺族から訴訟される可能性は高くなります。これに備える損害保険が「使用者賠償責任保険」です。この保険では、訴訟費用と賠償金が保険金として支払われます。

「使用者賠償責任保険」の保険金額ですが、私の印象では1億円が多いのですが、賠償金額の高額化や、業種応じて3億円以上の設定を推奨します。

経営者様で「使用者賠償責任保険」に未加入の場合は、今すぐ加入の検討をお勧めします。


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