保険仲立人(保険ブローカー)が日本で発展しなかった背景
保険仲立人(保険ブローカー)は1996年4月1日に保険業法改正で出来た制度です。
保険仲立人(保険ブローカー)とは「保険会社から独立した存在であり、顧客の為に中立的な立場で誠実(保険業法第299条 保険仲立人の誠実義務)に保険契約の媒介をする者である。」
海外では主に企業分野で活躍している制度です。
保険仲立人(保険ブローカー)は、顧客の為に保険会社と交渉するのに高度なリスクマネージメントの専門知識と経験が必要です。
最近、問題になっている企業分野における損害保険会社のカルテルは、保険仲立人(保険ブローカー)が機能していれば起こらなかった問題だと個人的には考えます。
それでは、何故、日本では保険仲立人(保険ブローカー)が発展して機能できていないのでしょうか?
答えは、乗合代理店の存在です。日本では保険仲立人(保険ブローカー)の制度が出来る以前から乗合代理店が存在していました。
私も現在生損保40社と取引できる乗合代理店の営業顧問をしております。
乗合代理店とは、複数の保険会社と委託契約を結び、複数の保険契約を締結する権利を持っています。
乗合代理店と保険仲立人(保険ブローカー)の違いは、乗合代理店は「保険会社の代理人」、保険仲立人(保険ブローカー)は顧客から「保険仲立人指名状」をもらう「契約者の受託者」の立場です。
両者は立場が違います。しかし、実際に複数の保険会社と保険契約について交渉する事には変わりはありません。
また、損害保険は長く規制の時代が続いたために、料率(保険料)が何処の損害保険会社で契約しても同じだった為に本業での競争ではなくて、マーケットシェアーを上げるための競争をしていて、企業分野を扱う乗合代理店がプロフェショナルではない「利益相反」している企業の子会社、銀行の別動隊、商社の別動隊が担ってきました。
契約する側の企業も保険仲立人(保険ブローカー)に別にブローカーフィーを払うよりも乗合代理店に同じ保険料を払えば、乗合代理店は、保険料の中から手数料をもらうので、費用が少なく済みます。結果、世界で活躍している保険仲立人(保険ブローカー)も日本では乗合代理店を系列で運営しており、ブローカーフィーではなく代理店手数料で稼いでるのが実態です。
諸悪の根源はマーケットシェアー拡大の為の「利益相反」の乗合代理店を量産して、真のリスクマネージメントが出来る人材を損害保険業界として育ててこなかった事です。
今回の損害保険業界の一連の不祥事を踏まえて損害保険業界が正常になることを期待します。
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