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親戚から訴えられる役員(株主代表訴訟・D&O保険)
株主代表訴訟とは、会社法847条「株主による責任追及等の訴え」に基づいて株式会社の経営者である取締役を株主が会社に変わって、その経営責任を追及する訴訟手続きの事です。
手続きの費用としては訴状に貼付する印紙代金13,000円と安価に訴訟を起こすことが出来ます。
勝訴した時の利益は株主は享受せず賠償金は会社が受取ります。
株主代表訴訟は大企業の事だと思われていますが実は「8割強」が中小企業で起こされています。
私が代理店経営をしていた地域は大手自動車メーカーがあり、そのサプライチェーンである中小企業が多くありました。戦後に小さな鉄工所として創業した会社も大手自動車メーカーと共に成長して売上規模が数百億円、従業員数も数百人規模の会社は珍しくありません。
その様な企業は同族経営が多く、株主も同族が持っています。創業者の時代なら問題は無かったと思いますが、今や孫の代となり株主も分散してしまっいる状態だと親戚から株主代表訴訟を起こされるリスクが非常に高いです。
中小企業で、同族経営が行われている場合には、役員の多くが親族であることが珍しくありません。このような状況では、役員が公私を混同することがしばしば起こります。例えば、会社の経費を私的に使ったり、社長が高級車を購入する経費を会社に負担させたり、あるいは、家族で海外へプライベート旅行に行く費用を出したりすることがあります。中小企業の場合、役員が親族や部下であることなどから、経営者が公私混同をしても、あまり問題視されることはないようです。
しかし、株式会社という仕組みを用いている場合は、代表者は株主に対して財産を預かっている責任が、会社に対しては「善管注意義務」や「忠実義務」を果たすべき責任があります。
大企業では、公私混同しないように統制がされていますが、中小企業ではそのような統制はあまりありません。
実際、親戚の株主から相続がらみや、役員報酬が高額すぎるなどの、やっかみから株主代表訴訟が起こされています。
その様な株主代表訴訟から役員を守るのが「D&O保険」です。
「D&O保険」は株主代表訴訟の役員個人が負担すべき「訴訟費用」や実際に裁判に負けた時の「賠償金」を保険金として支払います。
また、役員が死亡した後に起こされた訴訟についても対応できます。
こちらについては私のnoteを参考にしてください。
「D&O保険」は大企業向けの損害保険と思われており、中小企業の経営者の90%近くが未加入の状態です。役員個人を守る損害保険ですが保険料は全額損金で計上出来ます。役員ご自身とご家族の為にも「D&O保険」のご加入を検討することをお勧めします。