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雇用慣行賠償責任保険のモラルリスク

2024年11月7日の日経新聞に

関西の学校法人が開いた研修で外部講師から「腐ったミカン」などと言われて退職を迫られ精神的苦痛を受けたとして、男性職員3人が損害賠償などを求めた訴訟は6日、大阪地裁(横田昌紀裁判長)で和解が成立した。法人側が原告らに謝罪したうえで、再発防止策を講じ計9262万円の解決金を支払う。

と言う記事がありました。学校法人が外部講師に依頼して退職させたい職員を対象に「セカンドキャリア研修」と言う名前の「リストラ研修」をしたと言う事です。「リストラ研修」は外部講師が汚れ役になるので学校法人には使い勝手のいい制度です。訴えを起こした3名以外にも10名が、この行為により退職しているそうです。

損害保険には「雇用慣行賠償責任保険」と言う賠償責任保険があり、セクハラ・パワハラ・不当解雇に対して企業側が法律上の賠償責任が発生した場合に訴訟費用と賠償金を保険金で支払うものです。「上乗せ労災保険」の特約としても広く認知されています。

セクハラ・パワハラは、極端な例を除いて被害者側の受止め方により、それがハラスメントかどうかの判断が変わるので賠償責任保険の補償の対象とするのは良いと思いますが、不当解雇は、今回の学校法人の様に、明らかに「リストラ研修」をする様な場合でも賠償責任保険の補償の対象となるのは、モラルリスクの観点から如何なものかなと個人的には思います。

例えば、業績が悪くなりリストラを開始しようと思った経営者が、仮に不当解雇で訴えられても大丈夫なように雇用慣行賠償責任保険に加入して強引なに従業員を退職させたなら完全にモラルリスクですよね。

この学校法人は以前にも理事2名を解雇して、訴訟をされて多額の和解金を支払っている不当解雇の常連です。

政治の世界でも日本の解雇規制は厳しすぎて労働者の流動性が担保されていないので、労働生産性が低いから、金銭による解雇のルールを作るべきだと言う議論もあります。法律の改正がなされてない現在は、やはり解雇規制は厳しいものだと思います。

いずれにせよ、一人でも従業員を雇用している経営者様は「上乗せ労災保険」「使用者賠償責任保険」「雇用慣行賠償責任保険」の加入は必須だと考えます。

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