比較・推奨販売で思う事
2024年11月30日の日経新聞によると、
金融庁が保険代理店のFPパートナーに対し、保険業法に基づく立ち入り検査に入ったことが分かりました。同社は、多額の広告費を支払った生命保険会社の保険商品を優先的に顧客に推奨していた疑いがあり、9月に報告徴求命令を受けていた。立ち入り検査を通じて販売実態などの解明を進めるそうです。
FPパートナーが金融庁の立ち入り検査を受ける
FPパートナーは、ファイナンシャルプランナーなどの資格を持つ社員が家計の相談に乗る「マネードクター」を展開する大手保険代理店。訪問型の代理店としては業界最大手で東証プライム市場に上場しています。
同社は、市場の実勢とかけ離れた多額の広告費を保険各社から受け取っていたことがすでに明らかになっています。広告費の多寡が事実上の便宜供与として機能し、顧客に最適な保険商品を勧めていなかった可能性があると金融庁はみている。立ち入り検査を通じて悪質な事実や法令違反が見つかった場合は業務改善命令などの行政処分を行う可能性があるとの事です。
FPパートナーの様な多数の保険会社と委託契約を結んでいる会社は、保険業法で比較・推奨保険会社を明示しなくてはなりません。
比較・推奨販売とは
比較・推奨販売とは、
比較説明+推奨販売のふたつを意味しています。
(1)比較説明
比較説明では、複数の保険会社(保険商品)を説明する際に、保険商品のパンフレットの保険商品概要に記載されている内容を提示し、保険料の比較だけではなく、そのものの全体像(メリット・デメリットや特徴等)を適切にお客さまに説明し、お客さまの意向に沿った保険商品を選定していただくようにすることが重要となります。
要するにお客さまに誤認を与えない説明が求められます。
(2)推奨販売
推奨販売では、特定の保険会社(保険商品)を提案するうえで、自社が何故その当該保険会社(保険商品)を推奨するのか、その根拠を明確にお客さまへ説明し、理解を得たうえで提案を実施しなければなりません。
ただし、お客さまが保険会社又は保険商品の指名し、説明を求めた場合は異なるため留意が必要となります。あくまでもお客さまが特段の意向や要望がない場合に推奨販売を実施する募集スタイルが本来の在り方となります。
推奨販売のパターン
ア.保険代理店独自の推奨理由・基準に沿って保険会社(保険商品)を絞り
込んで推奨する。
※当社は・・・の理由でA社の保険会社(保険商品)を推奨する経営
方針として・・
イ.保険代理店独自の理由・基準に沿って推奨保険会社(保険商品)を絞り
込んだ後、お客さまの意向に沿って特定の保険会社(保険商品)を選定
して推奨する。
※当社は取扱保険会社の中で事務に精通しているA社とB社を推奨保険
会社とし、当該2社の中からお客さまに意向に基づいた保険会社
(保険商品)をおすすめします。
この様にルールは決められているのですが、お読みになって意味がお分かりになりましたか?
そもそも、保険業法が改正されたのは、全国に来店型の店舗を構える大手乗合代理店が一部の外資系の生命保険会社の商品を優先的に販売していて、顧客には、客観的に比較している様に錯誤されていたのが原因です。
そこで、比較・推奨の考え方が導入されたのです。
当時、私は保険代理店で経営者をしていて、自社の比較・推奨保険会社を決めなくてはならなかったのですが、何度読んでも理解できませんでした。
要は保険業法は、実質的に出来ないことをやらせようとしているのです。
また、損害保険メガ4社の一連の不祥事で、比較・推奨会社の理由として、「自社が事務に精通している」が通用しなくなると言われています、。
30年この業界にいる私が理解できないのに、一般顧客が理解できるように、ほぼ同じ内容の損害保険メガ4社の自動車保険の内容を明確に説明できる人はいるのでしょうか?
私は、いっそのこと自由化前の時代に戻った方が顧客の為にも良いのではないかと思います。
金融庁は、いつまで実効性の無い規制をするつもりなのでしょうか。