デビュー戦は、心から楽しみたい。廣田あいがバレー人生を振り返る
本特集企画「決戦前夜~眠れない夜の裏話~」では、アスリートやスポーツ指導者などの「決戦前夜」に迫ります。
第15回のゲストは、バレーボール NECレッドロケッツ(V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN)の廣田あい選手。「緊張しても眠れなかったことはない」廣田選手が最も印象に残っている試合は、高校3年生の春高バレーだそうです。
高校在学中に訪れたコロナ禍。さまざまな制限の中、どのように考え、バレーボールと向き合ってきたのでしょうか。高校時代の悔しい思いと、これからの展望をお聞きしました。
(インタビュー・文:高島麻利央)
<「決戦前夜~眠れない夜の裏話~」過去の特集記事がこちら>
ボロボロで戦った、春高バレー
「自分、寝れるんですよね」。
どんな試合でも眠れなかったことはありません。これまでのバレーボール人生の中での大一番が、高校3年時の春高バレーへの出場権がかかった3位決定戦。この前日ですら、ぐっすり眠れたんです。でも試合直前にはとても緊張したのを覚えています。
わたしたちの代は中学時代に全国大会で優勝したメンバーが多く、ほとんどが1年時からレギュラーだったんです。その分周りからの期待も大きくて、プレッシャーに感じていたのだと思います。
高校2年時にコロナ禍があって、学校生活はかなり影響を受けました。2年生の春から夏休みまで、部活もできなくて。開放されている近くの体育館に行って練習したり、バレー仲間や兄弟とビーチバレーをしていました。
大会はほとんど中止に。学生最後の春高バレーだけは開催されたのですが、試合勘がなくなっていて、変な感覚のままプレーをしていました。納得のいく結果は、出せなかったです。
チームの状態があまり良くなかったので、不安も大きくて。自信を持って「行くぞ!」という気持ちになれませんでした。
わたし自身もケガをしていましたし、元々持っていた膝の痛みもひどかったです。コンディションは最悪でしたね。テーピングをぐるぐるに巻いて、痛み止めを飲んで試合に臨みました。身体的にも精神的にもボロボロでした。
結果、試合は負けて全国大会出場は叶わず。個人としてもチームとしても注目してもらい、メディアで取り上げていただくことも多かったのに、「やりきった」と思える試合がなかったんです。心残りでしかないですね。
高校で味わった悔しい思いを教訓として、レッドロケッツで取り返していきたいと思っています。
高校時代は練習後に時間がなかったので、ほとんどクールダウンをしていませんでした。帰った後も疲れてすぐに寝てしまっていたので、十分に身体のケアができていなかったのだと思います。きちんとストレッチやマッサージができていたら、コンディションも維持できたのかなと。
あと、精神的にネガティブになることが多かったです。キャプテンをやっていたのですが、チームがうまくいかないと「ダメだダメだ」と落ち込んでいました。気持ちを前向きに保てていたらいいプレーに繋がったのではと、反省しています。
あの時の楽しさを、また味わいたい。
「心から調子がよかった」と思える試合は、中学3年時の新人戦・都大会ですね。理由はわからないのですが、試合前からワクワクしていました。いいイメージが湧いていて、「早く試合がしたい」と思っていました。
試合も不思議なほどうまくいって、スパイクを打つ前から「これは決まる」とわかるくらいで。いわゆる“ゾーン”に入っていた印象ですね。「トスを全部わたしに持ってきて!」と思えるほど、自信にあふれていました。
リードされてもセットを取られても不安にならなくて、自然と笑顔になって、「楽しい! ここからやったる!」と終始強気でいられました。
最高潮に楽しかった経験があるから、そうでない時に「状態がよくない」とマイナスに感じてしまうのかもしれません。またゾーンを味わえるように、いいコンディションづくりに励みたいと思います。
なぜわたしがここに......入団当初の緊張と現在の思い
入団したての頃は、先輩方を見て「スゴイ方々だ…」と思って毎日緊張していました。自分がこの環境にいられるのが不思議な感覚で、なかなか慣れなかったです。「先輩方は有名人、わたしは一般人」のような括りで考えてしまっていて。
チーム合流当初はコロナ禍で練習が中止になっていたので、なかなか会えない先輩方もたくさんいました。寮でまだ会ったことのない先輩に遭遇すると、「あ、どうも……」と微妙な空気になることも。変な緊張で、ストレスがたまっていました。
チームの皆さんと対面できたときには、既にリーグ真っ最中。全体練習が復活して1週間後には試合があって、「すごいタイミングで入ってしまったな」と思いました(笑)。
わたしは入団してまだ試合を経験していません。自分が出るとなったら、「どんな緊張感なんだろう」と気になります。楽しめれば力を発揮できると思うので、早くチームに馴染んでいきたいです!
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