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ストーカー鬼ごっこ

「つ~かまえた」
そう言って私をずっと追いかけてきていたストーカーが私の肩を掴んで囁いた。
「いやーっ!!」
全力でその手を振りきって家まで逃げ帰って…来たはずだったのに…
そして、私は…

1ヶ月前

(目覚ましの音楽)
「うぅ~ん」
「アレクサ、おはよう…」
”はい、おはようございます”
カーテンが空き、ネットニュースが流れ始めて、コーヒーメーカーが動き出す。
コーヒーメーカーはこの間、ボーナスで頑張ったご褒美で豆から挽ける全自動のを買って、しかもアレクサ対応なので自動で淹れてくれる。

「コーヒーのいい香りで起きれるなんてサイコー」
なんて馬鹿げた事を言いながら起きる。

あまりTVは見ないので家にテレビはないが、ネットラジオを聴きながら朝食を食べる。
今日は、あまり興味を引くような話題はなさそうだ。
ラジオの声が遠くで「先日、ストーカー被害にあった朝霞市の女性…」と流れているが、聴き流しながら洗面台に向かった。

「アレクサ、行ってきます。」
”はい。いってらっしゃい”
室内の電気が消え、ネットラジオが止まった。
カーテンは日没の時間に合わせて自動で閉まるように設定してある。

留守でも、まるで人がいるような感じにさせるようにしているため、時折勝手に電気がついたりカーテンの開け閉めが起きるようにしている。
女性の一人暮らしは、日本は安全とは言えやっぱり不安がつきまとう。

会社の昼休み、会社のカフェラウンジで同僚と最近のニュースの話題になった。
「この間、ストーカーにあった人、どうも近くの会社で働いてたみたいなのよ。」
「え?ストーカー被害にあって逃げてたけど、失踪しちゃったって人?」
「そうそう。でも、おかしな話なんだってそれ。聞いた?」
「どういうこと?」
「なんか、追いかけられていた人は失踪して、追いかけていた人もわかってたんだけど、その人は全然違うばしょで同じ日に亡くなっていたらしいのよ。しかも女性だったって」
「えーっ、こわい。そのストーカーされてた人が殺したとか?」
「それはそれでびっくりだけど、そうじゃなくて、その人はどうも以前ストーカー被害で警察にな何度も相談していたらしいんだって。」
「それは、その人は以前は被害者だったってこと?」
「実は、そうらしいの。びっくりでしょ?しかも、その人が追いかけられていた人は、居なくなった日に同じように別の場所で死体で見つかったんだって!!」
頭が混乱しそうになった。
「じゃあ、この間失踪した人は、もしかして、今ストーカーになっているってこと?」
そんな馬鹿な話はないよね。
その場は、全員「まさかね~」と笑って終わった。

1ヶ月後

ある日の夜

「うー。今日も遅くなった。最近、残業ばかりでしんどいよ。」
愚痴をこぼしながら最寄りの駅で降りてマンションまで10分ぐらい。
いつもならそんなに寂しくない通りなんだけど、この時間はあまり人通りがない…。
私の足音とは違う足音が後ろから聞こえる。
『えっ?私つけられてる?』
ドキドキしながら足早にマンションのエントランスに入って影から外をみる。
『誰かがこっちを見ている気がする』
恐怖で心臓が止まりそうだった。

翌日

今日は早めに帰ろう。そう心に決めて最近遅かったから、今日は定時で上がることにした。18時になるとすぐに席を立ちフロアのスタッフに挨拶をして帰る。
駅から出ると…人は居るけど、なぜかあの足音だけ耳に入ってくる。
『またいる』
振り向くのは怖い。また、急いでマンションまで戻る。
もう怖くてたまらない。警察に電話をするか悩んだけど、今日はやめておいた。『明日、またやられたら警察に連絡しよう』

次の日

昼、会社の同僚にも話をして「考えすぎだよ」と軽くあしらわれてしまった。
19時、また私と違う足音が聞こえてくる。
つけられている。怖い…恐怖でしかないのだけど、警察に電話したいけどなぜか体が恐怖で動かない
『どうしよう』

その瞬間

「つ~かまえた」
うしろから手が伸びてきて私は捕まえられた。
「いやーっ!!」
全力でその手を振りきって家まで逃げ帰って…来たはずだったのに…

「次はあなたの番よ」
という声とともにその手はスゥーっと消えていった。
『誰?』そんな事を考えているのもつかの間、私は暗闇の中にいた。
「どこ?ここはどこ?」
さらなる恐怖に潰されそうになっていると、突然暗闇の中から大きな目が。

「ふふふ。捕まっちゃったわね。今度はあなたが おぉにぃよぉ~。」
目の下に現れた大きな口が大声で笑った。
誰かを追いかけて怖がらせて恐怖に怯えさせて最後は捕まえなさい。
うまく行ったら、生きて戻してあげる」

「じゃあ…うまく行かなかったら?」

「うまく捕まえられなかったら、当然あなたは死ぬの。じゃあ、よーいスタート」

私は突然、暗闇の中に一人放り出された。

今度はあなたを



『つ・か・ま・え・た』

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