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嘘のような実話「臨死体験」

突然ですが、
臨死体験をしたことはあるだろうか。

19歳のある日、ある事件が起こり、私は2日ほど眠り続けたことがありました。その時に長い夢を見ていたのですが、もしかするとあれは臨死体験だったのかな…と思うのです。

今日はそういう、ちょっとスピリチュアルなお話。


はじまり


私は短大の階段で倒れているのを先生に発見されました。呂律の回らない口で先生に「大丈夫、眠たいだけ…」と言っていましたが唇は紫色に染まり体温は下がり続けていたそうです。

保健室で眠り続け、何度か母の顔を見たような気がしました。何か話した気はするけれど、覚えていません。酷い眠気と、とにかく寒いような暖かいような、ふわふわして「大丈夫。帰ろう…」と言っていた気がします。


どうしてこうなったのか。
今となっては無謀なことをしたなと思うのですが、大量の様々な薬を飲みました。


私は死にたかったわけではありません。
病んでいた友人が自殺しようとして大量の薬を取り出したので、阻止したかったんです。
今やめさせてもこの友人は、私と離れた数時間後に大量に薬を飲むだろう。…なら奪い取ってしまおう。目の前で止める側の不安な気持ちを味わってもらおう。そして反省してもらおう。単純にそう思ったのです。

そうです。
私の考え方も行動も間違えています。
相手の気持ちを考えない自分勝手な正義感の押し付けです。お節介です。でも当時の私は、それが相手の為であると思い込んでいました。


不思議な夢


何も見えない真っ暗な空間を歩いていました。何の感覚もないけど、ただ歩いています。
目が慣れたのか、どこかに光があるのか、うっすらと赤黒いような壁が見えました。真っ直ぐのトンネル?みたいな感じの道でした。
道の先が見えにくいなあ、と瞬きをした瞬間、ただただ広い草原のような場所で立っていました。

足元には簡易的な鎧を着た若い男性が横たわっていました。おそらく死んでいます。私はその姿を見て、
「ああ、あの時の私か…」と思いました。



ここで不思議なんですが、
「あの時の私か…」と懐かしんでいる自分の感覚と、さっきまで保健室で寝ていて今の現状にびっくりしている自分が、同時に出てくるのです。

違う感情を一度に味わっている。パンとご飯を一緒に食べているような…いや、ちょっと違うか。…言葉で説明し難いのですが、なんとも不思議な感覚なのです。


草原を歩いてみます。
石で出来た階段を登ろうとしたら、いつの間にか小学校でした。私の姿も小学生でしたが、私の姿は黒人の男の子になっていました。

私の中身は「ああ、あの時の私か…」という感覚と「いつの間に男の子?てか誰?」とまた分離していました。
どこからか頭に石を投げられて、酷く腹が立ちました。黒人少年(おそらく私)は仕返しをしようとして近くにある棒を手にとり、相手に襲いかかりました。



棒だったものは長い刃物でした。
先程まで黒人少年だった私は、刀を持った武士の姿になっていました。先程投げられた石に対する苛立ちが止まりません。
いつの間にか草原に立っていた私は、簡易的な鎧を着た男性を後ろから斬っていました。振り向いた男性は、最初に横たわっていた若い男性。
あの時の私でした。

最初に横たわっていた男性も、その男性を殺したのも、私だったのです。あれ?不思議だな。


また瞬きをしました。
場所が変わっていました。
私は大きな犬でした。ゴールデンレトリバー。
家の中に居て、2歳くらいの幼児にくっ付いて一緒に昼寝をしています。キッチンに母親らしき人がいます。

その母親の姿も「あの時の私か…」と懐かしんでいました。そしてさっきまで犬だった私は、気付くと一緒に昼寝をしていた幼児になっていました。
数十秒で幼児はあっという間に成長し、かわいい女子学生になりました。

その女子学生は、
自殺しようとしていた友だちでした。

全てに絶望していました。市販薬と病院からの薬を紙コップに開け溜めています。その時、誰かが走って来ました。友だちでした。目を丸くした友だちが紙コップを取り上げてボリボリ食べてしまいました。


「あの時の私」でした。


ここではかなり話を削っていますが、びっくりするほどいろいろな人が私でした。
時代や国や老若男女関係なく、動物や虫や、草花や石にも「あの時の私」でした。

黒人少年の時に石を投げられた苛立ちは、次の私が引き受けて発散した。虫の時に水溜りで溺れた恐怖は、次の私が引き受けて水を怖がった。
あの時私が傷付けたあの子は、傷付けられた私だった。そうやって全てが繋がっているような感覚。

頭に浮かんだ瞬間に、もうそこに居る。
瞬きのような速度で時代も場所も人も変わっている。
外側から姿を見れるし、その姿にもなれる。
まさに言葉にできない不思議な感覚。

ああ、懐かしいな。懐かしいな。

ずっとそんなふうに思っていました。


目覚め

目を覚ました私は、自分の部屋のベッドに居ました。後頭部が重く感じました。軽い吐き気がします。

自分が誰かわからなくて少し戸惑いました。でも5分くらいすると感覚を取り戻し、いろいろ思い出しました。

トイレに行こう部屋を出ると、母が言います。
「大丈夫か? 2日間寝続けてたで。何回も息してるか確認したわ」
月曜だったのが水曜の夜になっていました。私は何事もなかったかのように
「マジで!?めっちゃ寝たわ!」と言って笑っていました。


まとめ

友だちに会うと泣きながら「ごめんなさい」と言われました。私も友だちに謝りました。心配させました。不安にさせました。歪んだ正義感で、友だちを傷付けてしまいました。

私はこれをきっかけに、自殺防止ボランティアをし始めました。友だちのような人たちの手助けがしたかったのです。

不思議な体験のおかげで、見える世界が変わった気がしました。目に止まる全部が過去や未来の私に思えました。これが臨死体験なのかはわかりませんが、良い経験だったなと思います。

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