アル中女の肖像
冒頭、あまりに直裁的なテーマー
・社会問題
・統計学(と、そこにまとわりつく胡散臭さ)
・フェミニズム
を与えられるので、表出されている問題が何を語ろうとしているのかという一点に前のめりになるあまり、それらが本来語りかけるものを見逃しそうになる。(そういう姿勢も大事)
アル中女を演じる主演女優(タベア・ブルーメンシャイン
)自身によって選ばれた衣装はどれも、シーンに込められた意味とそれ以上を反映している。大都市ベルリンの夜更け、唐突に映される、煌々と輝く街灯に透けたレースの向こうに見えるドラァグクイーンの濃いすね毛。カメラは再び"アル中女"を捉える。女は、飲酒によって自身とのより深い対峙を経験する。富、さらに、それを利用するための時間をも手に入れた彼女が選んだものは飲酒と自己対峙、という設定。1979年制作。カンボジアの人びとがポル・ポト政権、クメール・ルージュを逃れた年。人は生まれてから死ぬまで、膨大な時間を生きる。
作中、富めるアル中女は、等しく酒に溺れたホームレスの女と伴走する。加えて、お堅い服装の女、統計学とフェミニズムを語る女と伴走し、彼女たちの語る声そのものになる。実際には、ここに描かれている人物は彼女ひとり、即ちこの"伴走"相手はすべて、自分自身である。ただ一人、自分そのものについてのみ語っているのに、あたかもそこに何人もいるかのように登場人物が犇めいている小説とか、あるのかな。
Dans le film on se voit en regardant les autres. Le moment sucré où on se souvient de ce qui s’est passé et qui vient de se passer.
En plein nuit à Berlin,la lumière de réverbère sous laquelle un drag-queen fait ses jambes si poilues se dessiner.