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異国アメリカでの初めての出産:なぜ自宅出産を選んだか?

ニューヨークでの69時間 私の自宅出産の記録

※この記事は、著者が2015年から2017年までアメリカ在住時に体験したお産に関するもので、当時ドゥーラとしてお産に立ち会ってくれた清恵さんと一緒に振り返りを行った際にまとめたものです。

6年前の今日、2016年11月13日は娘の誕生日ではありませんが、私のはじめての陣痛が始まった日で、自分の人生に大きく影響を与える歴史の1ページとなりました。まさか、ここから3日間も陣痛に耐えて、69時間に及ぶ難産をニューヨークで行うことになるとは、当時の私には全くの想定外でした。

柔道整復師で骨格筋系のスペシャリストである私は、運動や食生活に関して万全の準備をし、医療介入なく自分の力でお産をしたいという思いで自宅出産を選択し、水中出産を準備していました。お産に関しては様々な選択肢があり、どう産みたいかは自分次第というのも、さすが自由の国アメリカならではだと思います。

2016年9月、妊娠8カ月でノースカロライナからニューヨークに引越して、安心して任せられる頼もしい助産師Shar、Carolとドゥーラの清恵さんに出会いました。

『お産は何が起こるか分からない』とはよく耳にしますが、自分の体でこんなことが起こるとは夢にも思いませんでした。しかも異国の地アメリカでこんなお産になるとは…。

前置きが長くなりましたが、お産も長かったのでご容赦ください。笑


『自宅出産を選んだ理由』

①分娩姿勢を自分で決めたかった


 病院の出産では、フリースタイルを許されている病院以外、基本的に仰向け姿勢で分娩します。しかし、人間の体は骨格的に仰向けで産むように出来ていません。皆さんもうんちは座って体が縦の状態でしますよね?昔、和式便所だった時代は体も前傾して座っていましたね。

 実は、お産も一緒です!

 分娩時に赤ちゃんは、重力の力を借りながら、地球の自転と反対周りで回転しながら骨盤を通るように自然界の長い歴史の中でプログラムされています。動物も寝ながら出産する種が殆ど居ないのは、そのためです。骨盤の構造的にも、和式便所姿勢の方が開きやすく、腹圧もかけやすいのです。とても理にかなっています。

 大事な我が子を産む時だからこそ、自由に本能の赴くまま、産みやすい姿勢になれるお産を選びたかったのです。

②エンドルフィン作用


陣痛の時に痛みを和らげてくれる脳内ホルモンの一つに「エンドルフィン」というものがあります。別名「脳内麻薬」とも言われ、強力な鎮痛作用や多幸感をもたらします。ランナーズハイって耳にしたことがありますよね?マラソン選手が苦しさを通り過ぎると気持ち良くなる状態です。この時もエンドルフィンが分泌されています。

私の場合、医療介入なく自分のペースでお産を行うことで緊張を和らげ、エンドルフィン作用を感じたかったのです。実際にエンドルフィン作用の幸福感のお陰で、お産に対する痛みを忘れる効果があるとされています。

私もあんなに辛い3日間の徹夜のお産だったのに、痛みを忘れて2人目を出産できました。その話も今後書かせていただきます。

③カンガルーケアをたっぷりと思う存分したかった!


『カンガルーケア』とは、生まれたての赤ちゃんをまだ胎盤もついている状態で、赤ちゃんの素肌にママの胸を合わせるように抱くことを言います。自宅で出産すれば1時間でも2時間でも好きなだけカンガルーケアを続けることができます。病院では看護師さんも仕事があるのでずっとというわけにはいきませんよね。

カンガルーケアの効果

  • オキシトシンの分泌:愛情ホルモン「オキシトシン」の影響で母子の絆が深まる

  • 赤ちゃんの体温、呼吸が安定する

  • 皮膚の常在細菌が付着し、免疫がつく

  • 母乳保育が進む

  • 赤ちゃんの眠りが深くなる

実際にカンガルーケアをした当時、あんなに辛い3日間だったのに(2回目 笑)、娘が産道をつる〜んっと通り、この世に出てきて、黒人看護師が私の胸に娘をドーンっと置いた瞬間!

『もう二人目欲しい』って思ったんです!

とても自然に。もう、一瞬で痛みを忘れました!オキシトシン、エンドルフィンの効果を感じずにはいられなかった瞬間でした。本当の意味で、自然の威力は人間の創造を超えることを体感したお産でした。

 残念ながら、最終的に私は自宅出産から病院出産に切り替わり、第一子は思う存分とはいきませんでしたが、第二子を出産した時は、2時間たっぷりとカンガルーケアを助産院での出産で経験することができました。4年前のことですが、今振り返っても忘れられない幸せな時間でした。

④お産の環境作りを全部自分たちで整えたかった

 産む場所をどう構えるか。
慣れ親しんだ家具や小物、大好きな音楽を聴きながら、自分が信頼できる人たちと初めてのお産を迎えたい!それが私の思いでした。
自分が最高にリラックスできる状態を自分で作るってことにもとても興味があったし、キャンドルや間接照明はアメリカでの方がデザインもお洒落なものが沢山あって選ぶのも楽しかった。
また水中出産も当時からニューヨークでは珍しいものでもなかったようで、Birth Poolのレンタル業者も3社ほどあり、比較検討しなが選ぶことができました。
 主人と一緒に引っ越してきたばかりのニューヨークでお散歩しながら、時には地下鉄で喧嘩しながら、色々買い揃えていたのも今となっては良い思い出です。笑

大きく捉えて上記4つが私が異国の地アメリカで自宅出産を選んだ理由です。
 
 結果的に助産師さんたちと私たち家族みんなでチームとなって力の限りできることを全部しましたが、子宮口が自宅では全開ぜず、病院での出産となりましたが、この時に頼もしい女性たち3人の寄り添いを経験したからこそ、今の私たちがあるので、自宅出産を選んだことに1mmの後悔はありません。
 一緒に分娩してくれる人も、環境もすべて自分、母である私が選択しているからこそ、よく聞くお産に対するモヤモヤ(「こんなはずじゃなかった…
」)もありません。
 お産で大事なのは、痛い、痛くないとかそんなことじゃなくて、
自分の心と体に寄り添ってくれる人がそばにいて、ママ自身が体の反応に本能のままに向き合える時間があることなんだと思いました。

記事を読んでくださった方へ


この記事がお産や産む場所に不安を抱えているママさん達やご家族のお役に少しでも立てれば嬉しいです。現在、日本では自宅や助産師さんと一緒に出産する確率が1%、99%のお産が医療機関で行われていると言われています。その中で救われた命が沢山あり、これだけ医療が発達した時代の流れの中で、当然のことだと思います。

 その一方で、私自身は自宅出産を乗り越えて最高のお産を経験することができました。この経験を多くの方に知って頂き、自宅出産や助産院での出産に興味や関心を持ってくれる方が増えると嬉しいっと思って1おります。
1%が0%にならないように、脈々と受け継がれてきた産婆(女性たち)の知識と技術が私たちの子供たちも救ってくれるように、機会があれば何回でも私のお産体験を言葉にしていきたいと思っています。

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