クロからのダイヤモンド
21:28
大移動を決めるも、夕飯を食べていない事に
気付き、途中のSAで勢いよく食べ終え、
22:50
目的地に到着した。
ヘッドライトを取り付け、
ラダーを担ぎ、竿を携え、
私のホームグランドへと向かう。
既に秋の虫の鳴き声も聞こえてくる中、
漆黒の闇をフラッシュライトが
切り裂きながら歩いて行く。
この地はノコギリクワガタが多い筈が、
姿はカブトムシのオンパレードであった。
丹念に一本一本確認しながら歩いて行き、
過去に採集した事のある樹を
下から確認する。
全く本命の姿は見られず、
またその樹の樹液の量も少なかった。
これは採集厳しいと呟きながら
他の樹も確認する。
先程の地では放虫、
此処では坊主か。
そう頭を過った所、今まで採集した事の
無い樹で黒いものが動いた。
あれはと思い、ラダーを伸ばし、
足場を固定してゆっくりとラダーの
ステップを登っていくと、
探し求めた本命の姿を捉えた。
直ぐ様iPhoneを取り出そうとするも、
光に向かってキイロスズメバチが
羽音を羽ばたかせてきた。
光の方向を変えるも
本命の行方が気になる。
スズメバチを無視し、再びライトを
本命に向けると、身の丈にあった
洞では無かった為か、勢いよく飛び出て
藪へと決死のダイブを図るかと思い、
右手を伸ばした。
手にした瞬間、夢の70mm超えを
遂に手にしたのではないかと思う程
大きく見え、スズメバチの奇襲に備え
急いでケースに仕舞った。
ラダーを降り、先程採集した個体を
再度確認すると、先の地で掴まされた
クロとは異なる、光で照らされた
身体の艶は比較にもならない程輝いて見え、
材から出た美しさを纏っていた。
7thブラックダイヤモンドに酔いしれ、
もう一度ラダーを登り、隈なく探すも
姿は無かった。
然しながら、今まで採集した事の無い
樹での実績が大変嬉しく、
ラダーを置いたまま他の樹を見て歩いた。
すると、コクワガタにしては大きいと
思える個体が枝を歩いていた為、
まさかと思いながら竿を伸ばした。
私は網での採集がとても下手であり、
入ればラッキーと思いながら
それに当てて、竿を縮めた。
黒い網の中にクワガタが入ったと
胸を撫で下ろして確認すると、
オオクワガタの姿であり、思わず大きな
声を上げた。
そしてこの時ばかりは、自身の網捌きを
自賛し、放虫で覆い被さった重い重圧から
開放された。
8thブラックダイヤモンドを仕舞い、
他の樹を見て回るも、
相変わらずの真夏の暴君祭りであり、
2020.8.11
0:09
車に戻り、
仲間に採集メールを送信した。
車中では吹き出た汗を拭い、
クーラーの風量を最大に設定し、
ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
コンビニを探し、スポーツドリンクを
購入し一気に飲み干した。
先程採集した7thを手に取る。
70mm超えと思われた大歯は
64mmであり、
網に入った8thは50mmであった。
汗で重たくなった採集ウェアを脱ぎ捨て、
汗でへばりついて中々脱げない長靴を
どうにかして脱ぎ、着替えを済ませて
自身へのご褒美と言いながら購入した
エビスビールを飲みながら本日の濃い
採集を振り返り、意識を無くした。
To be continued.