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ブラックを掴む

2020.8.10
8:30


足を伸ばしての睡眠がこれ程快適なのかと
アラームのスヌーズ機能に甘えてしまった。




温泉施設の為、大浴場にて湯船に
浸かれるが、採集時間を優先して
鍵をフロントに渡し、この地を後にした。





10:11




第一ポイントは本命を採集した事が無い
地になり、生息は薄いながらもしていると
思いながら、挑戦から3年経過している。




過去の採集履歴はかっしーさんから
お聞きしている為、諦めずに向かう。




爆裂クヌギに挟まるのは、
ヒラタクワガタ♂




ドルクスの格闘は楽しいものの、
本命とでは落ち着き方が異なる。


やはりレア産地は厳しいと思いつつも
真夏にラダーを抱えながら斜面を登る。


すると、遠目に獣がこちらを
観察しているように感じ、一瞬怯む。



今にもこちらに駆け出してきそうな
ただの木に、疲労しているのだと
独り笑った。


時計を覗くと、一日目に食した
お店で食べられるのではないかと思い、
急いで向かい、





11:10




早めの昼食を済ませ、次なるポイントへと
向かった。




その地はよく地主さんに逢う為、
お会い出来ないかと探しながら歩いた。




高所のヒラタクワガタ採集を終え、
車に戻ろうとした際に、
地主さんに出会えた。




今年も採らせて頂きましたと
ヒラタクワガタをお見せすると、
「採れたのなら良かったな、
ワシはそんなの要らんから持っていけ」
と、毎年同じ会話をしている事に気付く。




御礼を述べ、その場を辞去した。




時計を覗くと、最後のポイント採集までを
換算し、この地を離れ、大きくポイントを
変える事にした。




19:30




予定より時間が遅くなったが、
再び採集ウェアを纏い、長靴を履き、
目的の樹に向かった。




風がとても強く、不気味な音が
辺りから聞こえてくる中、
ライトを当てた瞬間胸を鷲掴みされた。








太い大顎が後退りしていく。


余りにも太く見えた顎から、
まさかと思いながらラダーを伸ばし、
それに近付き、引き摺り出した。



手にした瞬間、
違和感に襲われる。



これはブラックダイヤモンドではない。
ただのブラックだ。




顎の太さ、前胸背板の形状、横からの
外観から、全てが違和感でしかない
オオクワガタであった。




この樹ではブラック個体を
採集した事が無く、またこの地は
人が放つような場所とは到底思えないが、
辺鄙な地で放虫個体を掴まされた事に
憤りを覚えた。




それは64mm程で、この後直ぐに
仲間に連絡すると、かっしーさんは
私が話してもいないのに一瞬で
クロと気付かれた。



流石採集家であり、標本家でもある
かっしーさんだと唸った。



この放虫個体採集で一気に疲労感が
増したが、どうしても追加採集をしたく、
100Kmを超える大移動を決め、
アクセルを踏み込んだ。

To be continued.

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