転がるダイヤモンド
2020.8.7
21:40
仕事を終え、採集道具を用意し、
車に積み込んだ。
今回は西へ向かう。
現在は横浜に単身赴任で住んでいる為、
西にマーキングしたポイントはとても
遠く感じる。
睡魔にも簡単に屈服してしまう中、
SAPAで休憩を取りながら
2020.8.8
10:09
目的のICを降りた。
採集ウェアに着替え、長靴を履き、
時計を覗くと、激混みする飲食店の
開店と同時に入店出来ると考え、
車を走らせた。
遠征採集の醍醐味の一つは、
その土地ならではのご当地グルメを
食す事にもある。
わざわざ遠征地でチェーン店に入る事は
滅多に無く、その時はとても不機嫌になる程
遠征時の楽しみとしている。
10:34
暖簾を潜り、3番目の客として注文し、
食し、独り美味い美味いと食べ終え、
第一ポイントへと向かった。
11:39
虫っけの無さに違和感を感じ、
採集者の後かと思案しながら
坂道を歩き、藪を抜け目的の樹を見る。
洞に身を潜めるドルクスを掻き出し
取り出す。
ヒラタクワガタ♂
西の採集にはこのヒラタクワガタとの
格闘も楽しめる。
高所の捲れは形状が変わっており、
樹液も出ておらず、以前採集した事のある
大型のヒラタクワガタには出会えなかった。
ラダーを仕舞い、藪を抜け、汗を拭い、
ふと目をやると、
昨年まで更地だった場所に
太陽光発電が設置されていた。
どうか拡大されませんようにと
願いながら、この地を後にした。
GPSアプリの地図を見ながら
次々とポイントを変えては移動し、
本命を探し歩く。
採集出来るのはヒラタクワガタや、
ノコギリクワガタであった。
車に戻ると汗を拭い、スポーツドリンクを
口に流し込みながら「次だ」と、
淡々と同じ作業をこなしていく。
15:34
最も本命の可能性がある
所謂御神木に向かう事にする。
ラダーを担いで藪を掻き分け、
坂道を登っていくと息が切れてしまう。
体力を大幅に削がれてしまうが、
この樹は過去にも本命を
何度も採集している。
その為、息を切らしても足に力を込めて
歩いていける。
坂を登り切り、漸くその樹に辿り着き、
隈なく探すと、左前脚欠損の大型の
ノコギリクワガタが鎮座していた。
五体不満足を不憫に思いながら、
ラダーを伸ばし、捲れにそっとライトを
当てると、大型の♀を捉えた。
声を上げ、どのようにして採集するかを
考えるも、掻き出した後に藪に落下したら
絶対に見つけられないと想像した。
絶対に失敗出来ない。
そう思いながら、ラダーの最上段で
爪先を伸ばしながら、持参する一番長い
マイナスドライバーを手に♀に接触させる。
もう少し距離が縮まれば採集も楽だが
そうも言っていられない。
心拍数は更に上がる。
マイナスドライバーにて掻き出し続けると、
捲れの中を黒いダイヤモンドが
転がりながら私の手前で落下しかけた。
すぐ様掻き出しを辞めて
その落ちかけたそれに指を広げ掴んだ。
絶対に失敗出来ない採集に成功し、
大声で叫んだ。
To be continued.