7月の実態
2019.7.12
AM 4:00
小雨が降り続くアスファルトに
気を付けながら、独り採集地を目指した。
今年はとても雨が多く、
やきもきする天気が続く中、
日中の快晴を願いながら
アクセルを踏み続けた。
AM 9:30
晴れ上がった空を見上げると、
毎日がどんよりと曇る空から
開放され、鬱屈していた胸の中の
雨雲が消え失せていった。
もう採集ルートは決めている。
ドルクスが潜んでいそうな場所を確認しつつ、
一本一本丁寧に覗いて行った。
雨上がりからか、
地面にはこのようなモンスターナメクジが
ゆっくりと歩みを進めていたが、
見ている内に気分が悪くなり、
早々に立ち去ることにした。
しかし、探し求めている
ブラックダイヤモンドに出会えない。
このもどかしさも
採集に辿り着くまでの楽しみではあるが、
こうも自分が思うような採集に
繋がらない日々が続くとは
夢にも思わなかった。
PM0:00
遠目から良さそうなクヌギが目に入り、
何度も道を切り返しながら近付き、
車を停車させて歩いていると、
軽トラックで昼食を摂る農作業の方に
挨拶をしながら探していると、
洞内部に巨体を捉え、胸を鷲掴みにされた。
洞内部に途轍もなく大きな甲虫が
潜んでいる。
フラッシュライトで中を
照らし出して思わず笑ってしまった。
洞にはカブトムシ♀が潜んでいた。
フラッシュライトで照らそうが
微動だにしない姿は、
流石王者の姫の貫禄であった。
樹液木をマーキングしながら
車へと戻り、次なるポイントへと向かった。
その地は冬の採集で通った事を思い出し、
停車させ散策すると、
蝶々やトンボなどが無数に飛び回り、
虫気が多い地であり、
樹液を吸うオオムラサキに出会えた。
樹液を吸いながら翅を開く瞬間が
訪れると信じ刮目していたが、
近寄り過ぎた瞬間に飛び立ってしまった。
ただ、虫気の多いこの地には
少しの可能性を感じた為、
樹液木マークをして車へと戻った。
PM 1:10
今回の目的である
7月のヒメオオクワガタの実態を
探るべく、一気に標高を上げる事にした。
二度と晴れ間が見えないのではないかと
考えてしまう日が続いていた為、
高速道路を大声で歌いながら
進んで行った。
PM 3:10
晴れ渡る空の下、
無事目的のインターチェンジを降り、
山道を進んで行った。
この先から携帯電話の電波が届かなくなる。
そう心に呼び掛けていると、
次第に空は灰色に包まれ始め、
嫌な予感が去来し始めた。
目的の場所に到着し、
採集ウェアを再び纏い、
意を決してヤナギ帯に踏み込むと、
空がシクシクと涙を落とし始めた。
また雨か。
そう呟きながら藪を掻き分けて進んで行くと、
ヤナギに付く黒いシルエットが
目に入った。
To be continued.