ある愛の物語

私はいつも疑問だった…
みんなどうしてあの子にばかり背負わせるの?
どうしてあの子にばかり救いを求めるの?
いい大人が揃いも揃って恥ずかしくないの?
あの子だって私と同じ子どもなのに…

私は知ってる…
あの子が時々見せる笑顔が、とても可愛らしいこと
怒った顔が、怖さよりも逆に親しみを覚えること
本当は年相応に笑ったり怒ったり泣いたりできる、感情豊かな子だってこと
私は知ってる
だから、あの子が感情を隠すことなく、笑ったり、怒ったり、泣いたりできるように、私だけは対等でいよう
大人も含めたみんなが、あの子を特別に扱うけれど、私だけは乱暴に接しよう、言いたいことを言おう

でも…私には対等になれるだけの立場がない…
そうだ、あの子が翼持つ子の生まれ変わりと呼ばれているなら、私は…
「…そう、わたしは、剣持つ救世主の生まれ変わり!チルリル降臨!なのだわ!」

そうだ、私は救世主になろう、あの子と同じ…ううん、あの子より上の立場になってあの子を負かしてやれば、きっとみんなあの子のことを特別に扱わなくなる

だから…

「メリナ〜!わたしと勝負するのだわ!」
「…はあ、しょうがないわね…」
「チルリルは剣持つ救世主の生まれ変わりなのだわ!翼持つ子の生まれ変わりのメリナでは、チルリルにはぜったいに勝てないのだわ!」
「……はいはい、まったくあなたって………ふふっ」
「ん?何か言ったのだわ?」
「なんでもないわよ、ほら、さっさと始めるわよ、どうせ私が勝つけど」

だから、今日も私はあの子に言うのだ

「むき〜!今日こそは負けないのだわ〜!」

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