脳みその感性が3歳に退行していなかった。
人間とりあえずスカしている時期がある。
反抗期とか割と年齢が関わってくるのが多いと思う。
「はあ〜〜みんなで運動会のダンス踊んのめっちゃださい…楽しくない…」
「ジャージださい」「イキってるのダサい」
そんな時期。
けれどそんなスカしイキり時期が終わるとどうなるか。
私の脳みその感性が3歳に退行した。
もしかしたらもう少し上かもしれないけれど、
びっくりするくらい「ダサい」というのがどっか行った気がする。
それもいいんじゃねえか?というスタンスになった。
楽しければ迷惑かけなければオールオッケー。
私、その時大学生。
締切と山に囲まれた花の美大生である。
美大生になって、すごかった。
すごい優しい世界が広がっていた。
そんでとても優しくなれる。
みんなの努力がすごい見れる場所だったので、
自分の努力も分かっているので、
それはもうみんな自分たちを褒め称え合う。
「えっもうやばい」
「〇〇ちゃん毎回化け物じゃん…すごい…」
「何だこのキグルミ!?手作り!?」
「毎回写真の構図が神なんだが〜〜???」
「手間が、手間が鬼…」
「ばか野郎おまえこのクオリティでこの値段安すぎんだろ!金を払わせろ値段上げろ!」
「きらきら!」
「すごい!」
「かわいい!」
「きれい!」
「たのしい!」
出来ないこともあるし、フィキサチーフ(鉛筆が擦れないようにするスプレー式定着剤)を台風の風を浴びながら撒いてた時は地獄だった。
全力でやっても最善でやっても結果は一緒だったり、凄まじい感性の持ち主に出会って打ちのめされてたらたべっ子どうぶつの包みをパーカーに縫い付けていたり。
そんなとこで過ごしていたら、
色んなものが見えるようになった。
色んなものを話すようになった。
駅の中にフンが落ちていたら見上げると鳩が天井に住み着いていたり、
神社の木の荒れ具合と青銅の錆具合が気になったり、
歩きながら猫を探したり、
ここだけタイルの色が違かったり、
ここだけ苔が生えていたり、
蔦が伸びてきたり、
月がきれいだったり、
空がいつもより青くて深かったり、
色んなものが見えて、
見て!とっても面白い!
とってもきれいで楽しいでしょ!
脳みその感性が3歳児。
全部みんなちょっとした発見も面白い。
運動前のラジオ体操も全力で踊っちゃうし
芝生の道を叫びながら滑り降りる。
スカした時期を過ぎて、大学卒業して思うと
あれ、3歳児退行したというより、成長してないというか、これはずっとこのまま私の中にいたんだわ。
上を見上げながら歩いていても変な人かもしれないけど。
その人、実は雲の隙間から稲光のような光を形作る月を見ていたりする。