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オレンジ色の光
ミスタードーナツといえば、甘いドーナツの味と一緒に思い出す、ほっとするオレンジ色の光。
何年も前、夢の為に料亭でアルバイトしていた時の事です。
着付けやマナー、海外の方へのおもてなしや生き方、大切な事を沢山教えてくれたのが上司にあたる女将でした。
同年代の方は殆どおらず、両親と同じくらいの年齢の方たちの中で弱音を吐く場所もなく心が折れそうな時、女将がよく連れて行ってくれたのがミスタードーナツです。
仕事帰り、日が落ちて暗くなった駅までの道のりに見える、オレンジ色のあったかいライト。
疲れた体に染みる、甘いドーナツ。
私の事を「しーちゃん」と呼んで、娘のように可愛がってくれた女将。
心も体もヘトヘトだった私には、その味も女将の優しさも嬉しくて、夢のような時間でした。
電車が来るまでの短い時間、その慌ただしさがより愛おしい時間にさせてくれたように思います。
いつのまにか私にとってもお母さんのような存在になり、ミスドだけでなく時々食事に行ったり、恋愛の相談をしたり、かけがえのない時間を過ごしました。
今、私は親になり、子供たちとミスドに行くようになりました。
その度に、「しーちゃん何に食べる?」と優しく聞いてくれた女将を思い出して、ちょっと泣きそうになりながら同じように子供たちに聞いています。
そして、夜の闇に灯るあのオレンジ色のライトを見つけると、あの頃と変わらずほっとします。
優しい時間をありがとうございました。