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吃音改善に前向きになれない

吃音への悩みの大きさやはがゆさは、当事者の数だけ異なるだろう。
酷く吃っている人よりも、口数の少ない吃音者の方が、悩みが深刻なんてことはざらにあると思っている。

そして世に出ている吃音関連記事は、前向きなものが多く感じる。
例えば前向きに頑張りたいけれど、話す場所がない人。吃っても吃ってもそれでも前を向いて改善に取り組む人。吃音者の代表としてメディアに出演している人。

吃音に関する情報を集めているとそういった前向きな人達が目に付くけれど、そのような人たちは限られた人数しかいないと私は思う。
100人に1人いると言われる吃音者がそれほど目につかないのは、誰にも言いたくない、隠したい人が多いからではないか、そう思う。

陰に隠れた吃音者は、人と話すことを避け続けて段々症状が悪化している、連発や難発の症状は軽いはずなのに話すことに積極的になれない自分が嫌になる、言い換えばかりしていて真正面から向き合えていない……。
そんなことを一人で考えているのではないかと思う。

吃音に前向きになれずにいるうちのひとりである私が、自分にできることを考えた。
何もできないかもしれないけれど、私の頭の中を文章にすることで、誰かの心に刺さることがあるといいなと思う。
専門家とつながる機会があり、いただいた知見も少し紹介していきます。

まず吃音者が少しでも生きやすくなるために私がおすすめするのは、吃音を持っていることを打ち明けること。
私は確実に打ち明け出してから、生きやすくなった。
職場で打ち明けたら、話す場を強要されなくなった(これは罪悪感が湧いてくるケースがあるので慎重に)。
友だちと積極的に会うようになった(吃っても大丈夫という安心感を得た)。
家族と相談しながら自ら注文したり、またしてもらったりするようになった(家族は話す練習に付き合ってくれる)。

人と話すことが好きでも接客業をする必要はない、私はそう思う。
苦手じゃない仕事に取り組めばいい。
そんなに「やりたい仕事」に対して真正面から向き合わなくてもいい。
自分が生きやすい選択をしたっていい。
それよりも大好きな友達と会う時間の方が大切だ。
いや、私が逃げた先の「話せない自分が就いてみた仕事」は、意外と適職だった。
私が選んだのは、大手企業でのアシスタント事務とフリーランスのライター。どちらも生涯忘れられないほどに楽しい仕事となった。
吃音がなければ接客業を続けていただろうし、どちらも出会えなかった仕事だろう。

次は話す機会について。
今私は3年間在宅ワークをしている。この生活に慣れていくと話す機会がどんどん減って行って、たまに話す時のプレッシャーが大きくなる。
私みたいに在宅ワークでなくても、話す機会が少ない人がいるかもしれない。
そんな人は自分が抵抗がない程度から、人と話す機会を持つことが大切なのではと思う。
例えばスターバックスやマクドナルドはレジで頼んでみる(いつもはモバイルオーダーの人が多いのではないかな)、予約の電話が出来そうならたまには挑戦してみる、2週間に1回は友達と会う予定を入れる……。
ある専門家の人に言われた方法だけれど、話す機会をレベル1から5に分類していく。例えば飲食店での注文が苦手だったらレベル5、飲食店への電話は我慢すればできるレベルであればレベル2といったように分類する。
このようにして分けた話す機会を、レベル1から日常的に取り組んでいくこと。
自分の心を保つために、予期不安をなくすために軽いことから取り組んでいく。
特に在宅で仕事をしていて話す機会の少ない私は「機会損失」と「ストレス」が常に戦っている状態だ。気を抜くと話す機会を避けてしまうのを気を付けたい。

いつまで吃音に悩み続けるのだろうと嫌になることがあるけれど、そんな自分を受け止めることから始めるのが大切だそうだ。
無理に前向きになる必要はない。

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