現実と想像のBORDER
前回のイズへの旅路の続き。
大室山に着き、リフトで頂上へ。上につくと、火口の周りを一周できるようになっている。そこにはパノラマの絶景が広がっていた。
真ん中の火口ではアーチェリーをしているそうだが、その日は強風でお休み。
わたしはこの山にある予感を感じていた。
ここを見たことがなかったか。それも夢の中で。
あれは一瞥体験をしてしばらく経ってから見た夢だった。コントロールのきく明晰夢というよりは、そこをリアルで体験しているというようなはっきりとした夢だ。
わたしは高い山の上にいた。案内してくれている男の人と、わたしの他に2人の女性がいた。
山の上から地上を覗き込む。そこには広大な山々と雲が見渡せて、水色のまん丸とした水たまりのような泉が見えた。
わぁー。わたしは思わず声を出す。夫と息子もここだったら住みたいと思うかな…とわたしは思った。
ん…?
その時、猛烈な違和感を感じて、意識がさらに鮮明になった。なんで今わたしは夫と息子のことを考えたのだろう?現実世界ではないこちらの世界には、2人は存在してないのに…と。
絶景の反対側をみると、そこには大きな城のような建物があった。なんとなくそこは大学のような、学ぶ場所という感覚があった。
その前の広場では何人かの人がテニスをしていた。そこは雲の上にあるので、1人の人が道具を使ってコートにかかった雲をどかしている光景が見えた。
場面が変わって、建物の中にいた。そこではなにか演劇のようなもの見ている?練習している?人たちがいた。服装が雰囲気的にモーセとかイエスかなんかの演目に見えた。
また場面が切り替わって、日本地図を上から見ていた。他の人とどこへ行くかという相談をしていた。場所ははっきり覚えてないが、日本の真ん中あたりの縦のルートの話で、わたしの担当は下のあたりで、自分でここに行くと決めた気がする。
そこからは覚えてない。
わたしはその夢の意味がずっと気がかりで、これから移住する先が、その場所なのではないかという気がして、その答えをいろいろと探ってたのだ。
夢で見た絶景が、大室山から見る景色に似ている気がした。
(民家などはなかったが)
半分くらい歩くと、急に雲がかかり出し、あっという間にあたりが真っ白になってしまった。
もしやここは、異世界とのゲート、ポータルの一つなのではないだろうか。
現象界と潜象界の境目。この世とあの世の交差する場。
あの日夢に見た異世界は、高天原と言われていた場所なのではないか?地底世界でも現象界とも違う、もう一つの世界。
ちなみに大室山の麓には、理想郷という名の別荘地がある。
お椀型の大室山は高天原のエネルギーを受け取っているんじゃないだろうか。
一つ気なったのが夢の中の一碧湖はもっと大きかったこと。高天原は水が多くて、それが雨という形で現象界に降り注いでいるのでは…という気がした。
だとすると、この地は枯れている。
伊豆半島はプレート運動によって南から北上し、約100万年前に本州に衝突、その後半島になったと言われている。もともとはポリネシア系の大陸、レムリアあたりの土地がこちらに来たのかもしれない。
荒魂くんはこの景色を見たかったのだ。わたしと共に。
この数年、離婚の危機を乗り越えて歩んできた。わたしのこの人生において、夫と息子を連れてこの景色を見る…という意味も込められているような気がする。
あの日けんか別れをしていたら、ここへ共に来ることはなかったのだから。
そしてそれが、わたしの中のシナリオであった。
早く立ち去れと言わんばかりの強風に煽られながら、大満足で大室山を後にした。
そして次は一碧湖へと向かった。
つづく