イイ男でいたいんだ
大原君はベッドの上にガサッと香水とCDを投げた
「僕の好きな曲なんだ。貴方の虜っていうんだ」
香水は私がいつも「大原君いい匂い」ってクンクン
彼の匂いを嗅ぐから
「伊勢丹のお姉さんに、僕の匂いを嗅がせて
この香水と同じのくださいって探してもらったんだ」
彼は洋服も香水もブランドも興味ない
50万以上のスーツ着てるのに
そんなことも知らない
おぼっちゃんなのでお母さまや奥様が
買ってくるものそのまま着せられてる
スーツもネクタイもシャツもイタリア製
高くて良いものを着てる
イタリアに行くと女たちの買い物に付き合わされて
うんざりするそうだ
「別に何だっていいんだ」
優しくて博愛主義
まっすぐでかっこいい
何不自由なく育った人の典型
私はアルマーニのスーツの上着を脱がせながら
「貴方って本当に、おぼっちゃまよね」と言う
「おぼっちゃまって言われたくないんだ」
私はネクタイを解きながら彼を見上げる キスできる位置に彼の顔がある
「何もかも親父のおかげでこうなってるって
思われたくないんだ。僕だって必死で仕事してるんだ」
仕事を頑張ってる男が一番好き
仕事が出来る男が好き
「僕ねカミさんにオカマって言われてるの」
「どうして?」
「弱音を吐くから」
吹き出しそうになる
この人の奥様だから多分家同士の結婚で
相当なお嬢様だろうけど
気が強くてしっかり者なのね
たのもしいお嬢様育ちの奥様
「大原君シャワーいこっか」
抱き寄せられる
「ちょっとだけこうしてて」
ぎゅうっと抱き締められる
「貴方は魅力的だよ 独特なんだ
僕は二度と同じ女には入らないんだ
でも貴方には会いたくて仕方ないんだ」
私は黙って聞いている
「僕ね貴方のためにイイ男になるように努力するよ。
これはねカミさんの前じゃダメなんだ
好きな人の前じゃないと出来ないんだ
貴方の前では男らしくカッコつけたいんだ
カッコイイ男でいたいんだ」