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人生初のイギリスぼっち旅〜其の1エピソード編
こんな事が1年前に想像出来ただろうか。
なんの気無しに、『イギリスで踊りたい。』そんな事を口にしたのが2024年の冬。丁度1年前の話だ。
その頃イギリスの文化や歴史に興味を持ち、イギリスが『行ってみたい国』のリストに加わった。だけど渡英の予定も無く、本当にただ漠然と口にした『イギリスで踊りたい。』その言霊が成就したのだ。しかも最もリスペクトするダンサーであり、師匠でもある世界的超人気ダンサー、Diva Darinaとの再会と学びを添えて。
わたしは2018年からDiva Darinaを福岡に招き、ベリーダンスの国際コンペティションとワークショップとショーを開催する主催メンバーの中に居た。彼女の過去3度の来日、それにzoomを使ったオンラインレッスンコースの開講を合わせると計6回。わたしは主催者の一員という、幸運にもDiva Darinaに最も近い位置で彼女の教えを学べる恩恵を賜っていた。彼女のダイナミックでいて繊細、ドラマチックな表現力と圧倒的なダンステクニック、変幻自在の魅力的な振付に魅了され続けている。
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2023年1月。
コロナ禍を乗り越え、フェスティバル開催に伴い3度目のDiva Darina とのリアル再会を果たした後、わたしは主催メンバーから脱退し、2024年4月期からはDiva Darinaが主催するオンラインクラスのメンバーとなり、世界中の仲間と学んでいる。ただ1人の日本人である。
レッスンは週4回。現在ブラジル在住の彼女とは12時間の時差がある。深夜2:30に起き、3:00からレッスンスタートという過酷なスケジュール。1クール、4ヶ月間共に学んだ世界中の仲間達はリアルには会えず画面越しではあるが、時にはチャットでお互いのペット自慢をし、時には質問をし合い、時にはメールのやり取りをし、お互いがDiva Darinaという最高の先生へのリスペクトとダンスへの熱い向上心で繋がり合っていた。国境も人種も関係無い。そういうメンバーシップは素敵だ。
今回はその1メンバーで、共に同じコースで学んでいるイギリス人のSureyaがDiva Darinaを招き、ロンドンで初のインテンシブとショーを開催してくれる事になった。わたし達コースのメンバーにはいち早くその情報が開示され、参加を募ってくれた事が今回のわたしの渡英の大きなきっかけとなった。
Diva Darinaイギリス降臨は、まさに寝耳に水の如く突然降って湧いた、夢のような話である。後先考えている場合ではない。即決断しなければ。わたしはすぐさま開催日程とスケジュールを比較し手帳と睨めっこし、スカイスキャナーでイギリス行きのフライトを調べた。インテンシブの料金、福岡ー羽田と羽田ーヒースローの往復フライト代、現地のホテル代、食費、etc…。ざっと、渡英とインテンシブに掛かる費用を算出してみた。
『うっふ…』
変なため息が漏れた。
円安の今、かなり厳しい状況だ。しかもイギリスは日本に比べて物価が高すぎる。この金額は全く現実的ではない。いち小市民で大貧民である今のわたしには分不相応な額だ。そんな気持ちとは裏腹に、欲望と本音が乖離したかの如く、主催のSureyaに幾つか質問を投げかけた。すると即座に、とても丁寧かつ親切なメールが彼女から届いた。わかりやすく、思いやりと優しさに溢れた文面。それを読んだ瞬間、彼女の人となりが手に取るように理解でき、不安が和らぎ、『参加しよう』と決断する事が出来た。
やらない後悔より、やった後悔を取る。
ここで金額にビビって引き下がるのが1番情けないし、ダサい。千載一遇のチャンスを経済力を言い訳に棒に振るとは何ともしょうもない事だ。大丈夫、きっと何とかなる。チャレンジに不安はつきものだ。いやむしろ不安のないチャレンジなどチャレンジにならない。
根拠のないカラ元気と偽の自信で自らの勇気を奮い立たせ、わたしはSureyaに “I’d like to get a vip pass. …中略…I want to join your event!!”と参加の意思を伝えたのであった。
そこからはもう、何が何でも進むしかない。
不安だろうが金欠だろうが、行くと決めたからには、行く。行くしかない。何とかならない理由を探すのでは無く、全て自己責任で。行くか行かないか、その2択なのだ。そして行くと決断したからには、もうイギリスに降り立つ未来しか見ない。自分が望む未来以外の可能性を断つ。決断とはそういう事だと思う。
そんなこんなで半ばむりくりの、余裕皆無の崖っぷちチャレンジ。過去数回、ロシアへのひとり旅は経験しているがその時は完全ぼっちでは無く、日本語が分かる人がいてくれた。しかし今回は完全にぼっち。費用の問題に加えて言葉や現地の治安の心配も相まって、わくわくよりもザワザワが上回る状態だ。一体どうなるのだろうか。本当に大丈夫なのだろうか?
そんなこんなで、わたしの人生初のイギリスぼっち旅がここから始まる事になったのであった。
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