見出し画像

スタートアップの1人目PdM(プロダクトマネージャー)について〜やること・必要なスキル・育成方法〜

はじめまして。
株式会社riplaで取締役COOをしている張田谷(はりたや)と申します。

弊社は「事業成長に伴走するプロダクト共創パートナー」として、IT事業会社出身のBizDev、PdM、PM、デザイナー、エンジニアによる専門チームが、プロダクトの立ち上げから成長まで包括的に支援する「Product Lab」、SaaS事業を低コスト&短期間で立ち上げる「SaaS Box」というサービスを展開しております。

riplaのサービス「Product Lab」
riplaのサービス「SaaS Box」

今回は、様々な案件やお客様のプロダクトマネジメントを ”クライアントワーク” という形で支援してきた私から、スタートアップにおけるPdM(プロダクトマネージャー)の
・やること
・必要なスキル
・キャッチアップ / 育成方法
の3つに分けて、お伝えしたいと思います。

中でも今回は、特に困る可能性が高い、社内にPdMがいない会社に向けて、上記の発信をしていきたいと思います。


PdMのやることをどう決めていくか?

まず、「そもそも専任のPdMが必要なのか?」を考えるところから始めることが重要です。

こちらの記事でも触れていますが、PdMは事業が拡大してから必要になる職種で、立ち上げフェーズではむしろ、事業責任者やCTOがPdMの役割を兼ねる方が事業がうまくいきやすいです。

したがって、問いを変えると
・事業の立ち上げフェーズでは、PdM経験のない事業責任者やCTOが、どのようにプロダクトマネジメントの業務を分担するか
・事業の拡大フェーズでは、事業責任者やCTOが担っていたプロダクトマネジメントの業務を、どのように専任の1人目PdMに権限移譲していくか
を考えることが重要となってきます。

また、主要なプロダクトマネジメントの業務内容は、こちらも以前の記事で触れた通り、以下が挙げられます。

①プロダクトビジョンの策定
 プロダクトとして、誰にどんな価値を提供していきたいかを定める
②プロダクト戦略の策定
 年単位の時間軸で、誰にどんな価値を提供するかを定める
③プロダクトロードマップの策定
 数ヶ月〜1年程度の時間軸で、誰にどんな価値を提供するかを定める
④PRDの作成
 各機能の仕様を定義した文書を作成する
⑤デザイン / 開発のディレクション
 デザイン/開発が円滑に進むための情報・環境を提供する

加えて、付随する
経営層 / ビジネスサイドへのレポーティング
各種分析(ユーザーヒアリング、データ分析など)

この業務を分担するとした時に、事業責任者とCTOの得意領域を加味すると
・ビジネス知識に深く紐づく、①〜③は事業責任者
・開発知識も要求される、④と⑤は会社によって様々
というのが個人的な感覚です。

次に、1人目の専任PdMを置く場合には、アウトプットの出し方に比較的セオリーがあり、かつ、事業への影響も少ない、④と⑤の業務から権限移譲し、次第に①〜③の業務も任せていけるといいでしょう。

PdMに必要なスキル一覧

本セクションでは、事業の
・立ち上げフェーズにおける事業責任者 / CTO
・拡大フェーズにおける1人目PdM
がスムーズに業務をキャッチアップ / 育成できるように、それぞれの業務を遂行する上で求められるスキルについて、順を追って説明していきます。

プロダクトビジョン / プロダクト戦略 / プロダクトロードマップの策定

上記の3つに関しては、顧客への提供価値を定めて、事業価値(=売上や利益)や顧客価値(=課題解決や満足度)を高めていく視点がいずれも重要なため、求められるスキルが非常に近しいです。

個人的に重要だと感じているのスキルが以下の2つです。
事業戦略や数値への理解
プロダクトによる課題解決の引き出し

①については、市場とユーザーの間を行き来しながら、売上を適切な切り口で因数分解し、どんな顧客にどういった価値を提供すると、どれだけの顧客から、いくらの収益を得られるのかを把握することが重要です。

その上で、
「市場規模の大きい顧客セグメント
× 提供余地の大きい価値」
をいくつか見つけ出し、取り組みの優先順位をつけていく動きが求められます。

②については、①によって見つけた「提供余地の大きい価値」について、プロダクトによって解決できるかどうかを見極めるスキルが必要です。

技術は日々進歩を遂げていますが、思った以上にプロダクトでは解決できないことも多いのが実情です。
一方、それよりもたくさんの課題が、これまでプロダクトによって解決されてきたのも事実です。

そういった見極めスキルを高める上では、プロダクトによる課題解決の事例や、そもそものプロダクトの仕組みをインプットし、「提供余地の大きい価値」を、より精度高く選別できる状態を目指していくといいでしょう。

PRDの作成

プロダクトによる提供価値と解決方法が定まったら、それを具体的にどんな機能に落とし込んでいくかを考えます。

PRDの書き方は様々ですが、起案背景 / ユーザーストーリー / 成功条件 / 受け入れ条件などを埋めていくのが一般的です。
※詳細な説明は省きますが、ユーザーストーリーとは誰がなぜ何をしたいか、受け入れ条件とは何を満たせば機能が完成しているかを表したものです。

PRDを書く上で、最もPdMに求められるスキルは、実は、受け入れ条件を細かく詰めるためのデザインや開発の知識ではなく、ユーザーストーリーを正しく理解するスキルです。

当然ですが、ユーザーストーリーをどういった機能 / デザイン / 仕様で実現するかの知見については、PdMよりも圧倒的にデザイナーやエンジニアの方が長けています。

したがってまずは、ヒアリングを重ねるなどして、ユーザーの要望を精緻に理解するよう心がける方が、PdMとしてのバリューが出やすいと私は思っています。
反対に、ユーザーストーリーへの理解が甘いと、多くの労力を投下したにも関わらず、ユーザーに使われない機能を作ってしまうことになるので注意してください。

一方の受け入れ条件に関しては、まずはデザイナーやエンジニアの手を借りながら書けるようになっていき、次第に、デザインや仕様に関する自分なりの仮説が出せるようになっていくといいと思います。
自分なりの仮説が出せるようになってくると、PRDが完成するまでの速度や、デザイナーやエンジニアとのコミュニケーションのしやすさが格段に変わるはずです。

また、あわせて重要なのが、機能を作ることによる事業 / 顧客価値を解像度高く理解するスキルです。

PRDを作成していく中でよくあるのが
・何かの機能を実現する代わりに、何かの機能を諦めなければならない
・何かの機能の実現が技術的に難しい or コストが重く、性能をどこまで妥協するか決めないといけない
といった、品質 / コスト / 納期などのトレードオフに出くわすケースです。

そういった時に、機能を作ることによる事業 / 顧客価値を理解していることで、機能をどういった形で実現するかの取捨選択を、迷いなく行うことができます。

デザイン / 開発のディレクション

PRDの製作と並行してデザインの作成が、PRDが完成したらいよいよ開発が行われます。

PRD作成の業務と同様、上記のディレクションに際して重要なのは、
・ユーザーストーリーを正しく理解していること
・事業 / 顧客価値を解像度高く理解していること
の2点です。

デザインや開発は、ユーザーの要望を細かく理解し、1つ1つ形に落としていく仕事です。
したがって当然、開発に入った後も、PRDを作成していた時と同じようなトレードオフが発生します(なんなら、より細かい作業に入っている分、求められる顧客理解が細かいことも多いです)。

ディレクションにおいても、デザイナーやエンジニアが迷わずに作業を進められるように、PdMがユーザーの要望をしっかりと汲み取れていることが大切です。

PdMのキャッチアップ / 育成方法

PdMのキャッチアップ / 育成については、これまでに触れてきた
・PdMに求める業務内容
・業務を遂行する上で必要なスキル
を理解し、言語化できていることが最も重要です。

事業の立ち上げフェーズでは、PdM経験のない事業責任者やCTOが、ありとあらゆる手段を使って、足りない知識をインプットしていくしかないでしょう。
特に「プロダクトによる課題解決の引き出し」については、経験がないケースが多く苦労しやすいため、様々なプロダクトを自身で触ってみたり、事業責任者とCTOの知識のギャップを埋めたり、時には、コンサルや業務委託を頼りながら、知見を吸収するのもいいかもしれません。

事業の拡大フェーズでは、1人目PdMに再現性高く、権限移譲できる状態を作ることが重要です。
社内における、PRDのフォーマットが整っているだけでも、1人目PdMの迷いはいくぶん減らせると思います。
その上で、先ほども伝えたように、PRDの作成、デザイン/開発のディレクションといった、より現場に近い業務から引き継いでいくといいでしょう。
一方で、事業 / 顧客理解に関しては、養っていくまでに長い時間がかかります。事業責任者が責任を持って、育成していく根気強さが大切です。

最後に

いかがでしたでしょうか。
本記事を読んだことで、PdM経験者がいない企業であっても、少しでも社内にプロダクトマネジメントを取り入れやすくなれば幸いです。

改めてではありますが、株式会社riplaでは、IT事業会社出身のBizDev、PdM、PM、デザイナー、エンジニアによる専門チームが、プロダクトの立ち上げから成長まで包括的に支援しております。IT事業会社出身のプロフェッショナルなメンバーを集めているため、プロダクト成長を第一に伴走いたします。

riplaのサービス「Product Lab」

また、SaaS事業を低コスト&短期間で立ち上げる「SaaS Box」というサービスを展開しております。

riplaのサービス「SaaS Box」

もし、
プロダクトマネジメントを社内に取り入れる支援をして欲しい
・ニーズに応じて、コンサルティング実行支援など柔軟に対応して欲しい
といったご要望がございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。


いいなと思ったら応援しよう!