経理がちゃんとしていないと倒産するかもよ、という話
はじめに
やや脅し文句のようなタイトルになってしまいましたが、今回の記事は経理をちゃんとしていなかったせいで会社が倒産してしまうこともある、というお話についてです。
いきなりですが、日本の企業の創業から5年後の生存率はいくらでしょうか?個人的には意外と高いと感じたのですが、正解は81.7%ということです。米国48.9%、英国42.3%と比較してみるとより高く感じられます。
逆に言えば日本では創業から5年内に18.3%の企業が倒産しているということになります。倒産の原因は様々かと思われます。例えば資金調達が出来ずキャッシュが尽きた、製品・サービスが売れなかった(PMFを達成できなかった)、などコントロールが難しい要素に起因するものもあれば、経理がちゃんとしていなかった、というその気になれば防げた倒産もあったはずです。
*数値は「平成29年度中小企業白書「起業の実態の国際比較」」参照
経理がちゃんとしていなかったことによる倒産の例
①黄色信号に気づけず倒産
場合にもよりますが、多くの場合倒産する数か月前には危機的な状況が察知できるはずです。例えば月次で決算を締めて毎月のキャッシュフローが把握できていれば、直近の資金予測がある程度正確にできるはず。このままいけば危ない、ということに気づけば資金調達活動を行ったり、無駄な経費の削減や固定費を下げる施策なども打つことができます。逆に資金予測が出来ていなければ、実際は危機的状況を迎えつつあるにも関わらず新規の投資を行ってしまったりと、自ら首を絞めるような行動すら(信じられないことに)起こしてしまいます。これに関しては、破産した企業を経営者の一人として内部から見られた方の有名なnote記事がありますので是非ご参照ください。
②黒字だからと気を抜いてたら倒産
スタートアップだと短期的な成長を目指して最初は資金を燃やし続けるいわゆるJカーブの成長曲線を描くため、資金繰りの管理を行い、バーンレートやランウェイに常に注意を払っているという企業が多いと思います。(資金繰りについてご参考として記事を貼っておきます)
一方、受託開発などそれほど先行投資を必要としない事業を行っている企業の場合は売り上げが立っていて黒字であれば安心だろう、とそれほど資金繰りを重視していないこともあるのではないでしょうか。
実はここに落とし穴があります。黒字倒産という言葉を聞いたことがある人も多いかと思います。その名の通り、決算上は黒字にも関わらずキャッシュが尽きて倒産してしまうようなケースを指しています。
例えばシステムの受託開発を行っているケースで考えてみましょう。取引先から3か月の開発期間を要するプロジェクトを1,000万円で受注したとします。支払条件は検収日の翌月末日です。プロジェクトを進めるために毎月250万円の人件費などのコストが発生します。開発期間の3か月は売上が立っていませんが毎月250万円のキャッシュが出ていきます。3か月で無事に開発が終わり、検収も完了します。ところが翌月末まで1,000万円は入金しません。ここまでに既に750万円のキャッシュが出ていってしまっています。損益計算書上は1,000万円-750万円=250万円の黒字ですが、キャッシュフロー上はこの時点で750万円のマイナス、ということになります。つまり、750万円以上の資金の余裕がなければこの事例だとキャッシュが尽きてしまうことになります。これが黒字倒産のメカニズムです。
資金繰りが管理できていれば予め資金が足りなくなることが予測できるので、銀行から融資を受けることや取引先に支払条件を交渉することも出来たはずです。
③お金周りの管理を丸投げして倒産
ニュースでもよく見る業務上横領。田舎の中小企業で絶大的権力を持つ中年経理パーソンが犯す罪のイメージがあるが(偏見?)、スタートアップ界隈でもたまに聞く話(直接引用するのは憚られますが、Xで「持ち逃げ」とで検索すると事例が出てきたりします)。お金の管理とかは苦手で、、という起業家は多いはず。ただ、どれだけ信頼できる相手であっても一人にお金を任せるのは禁物です。横領は論外としても、一人で業務を担っていては悪意のないミスも起こり得ます。創業からしばらく、バックオフィスの人員が限られている間は、経理実務は別の誰かに移管する場合でも支払の実行は経営者が担当し続けることをお薦めします。もし支払いの数が多くて対応が難しい場合には、銀行口座を複数持ち、支払い用の口座は別途管理するなどしてリスクを低減させるべきでしょう。また、バックオフィスの人員が複数名になってきた際には支払業務は複数の目を通るフローにしましょう。不正やミスを防ぐためにはダブルチェックを入れるのが鉄則です。
さいごに
倒産にも色々あると思います。しかし、経理をちゃんとしていれば防げた、望まれぬ倒産を起こすべきではありません。資金もマンパワーも限られる中で経理に掛けるコストも労力も惜しいという企業も多いでしょうが、企業のフェーズに適した経理体制というものがあります。コストを抑えつつも、必要な経理体制を整えることで将来の成長を支え、リスクをコントロールできるでしょう。
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