見出し画像

スタートアップと資金繰りの話

スタートアップを経営していると「バーンレートいくら?ランウェイは?」という会話をすることがあると思います。バーンレートとはひと月の間に会社から出ていくお金のこと(細かく言えばグロス、ネットの2種類のバーンレートがあります)で、ランウェイとは手持ちの資金をバーンレートで割ったものを指し、資金がショートするまでにあと何か月残されているか、ということを意味します。
これらが正しく把握できていなければ投資実行において適切な判断ができなかったり、最悪の場合は気づいたら時すでに遅し、キャッシュが尽きる直前でもはや倒産を避けられないといった状況すら起こり得ます。したがって、スタートアップは創業初期の段階からこれらを適切に把握する必要があるわけですが、そのためには資金繰りの管理が重要となります。

スタートアップでは特に資金繰りが重要

資金繰りは全ての企業に重要ではありますが、特にスタートアップにおいてはその重要性が高いと考えています。ここではスタートアップを「急成長を志向する新興企業」としますが、急成長を目指すためには先行投資が必要となります。目先の売上が直ぐには立たなくとも将来の売上のためにシステム開発、人材採用、マーケティングといったものに投資を行っていくわけです。そうするとキャッシュはどんどん目減りします。(因みにPL上も赤字をどんどん掘ることになり、その後収益が黒字化、成長する形を「J」になぞらえてJカーブ型の成長曲線と言われます)
キャッシュが目減りしていくということはいつかキャッシュが尽きることを意味します。キャッシュが尽きると会社は倒産してしまいますので、いつキャッシュがなくなる見込みで、そのためにいつ頃どのくらいの資金を調達する必要があるのかを見通しておく必要があります。これが資金繰りとなります。
因みに、スモールビジネスでは一次方程式のような直線的成長を描くことになります。この場合、キャッシュは成長に伴って入ってくるのでスタートアップほどキャッシュが尽きてしまうことに注意を払う必要はありません。

スタートアップとスモールビジネスの成長線形

資金繰りが出来ていないと何が問題か

キャッシュが尽きてしまうと会社が倒産してしまうのは先述の通りですが、そこまでいかなくとも資金繰りが出来ていないと色々と問題が出てきます。

問題①:信用を失う

取引において支払期限を守ることは言うまでもなく重要です。資金繰りができておらずもし支払遅延を起こすような事態になっては信用問題になります。取引先としての信用を失ってしまうと支払条件の厳格化や最悪の場合取引停止という可能性もあります。

問題②:成長機会を逃す

スタートアップが成長する上で適切な投資が必要になります。資金繰りが正しくできていないために資金が不足し、投資ができなければ本来得られた成長機会を逃すことになってしまいます。

問題③:緊急時に対応できない

何としても採用したい人材が現れたのに資金がなくて採用できない!などという機会損失は避けたいものです。緊急への備えを含めた資金の管理ができていればそのような際にも対応できます。

資金繰りってどうやるの?

資金繰りがスタートアップに重要だということは分かった。では、資金繰りってどうすればいいの?と思われるでしょう。資金繰りを管理するためには、資金繰り表を作成することになります。資金繰り表には損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)などの財務諸表と違って決まった形はありません。前月末の現金残高にその月の収入、支出計画を加え、月末の予想現金残高を算出する形でスプレッドシートやエクセルなどで作成するのが一般的です(月次で作成する場合)。資金繰り表の作成方法についてはここでは詳細を説明しませんが、政策金融公庫がフォーマットを公開しているのでそちらを参考にしてみてください。(「経営計画策定に役立つ各種資料について」という項目からダウンロードできます)
以下に資金繰り表作成時に特に注意が必要な項目について解説します。

注意点①:売掛入金と買掛支払のタイミング

発生主義で会計処理を行っている場合、取引発生時に売掛金/買掛金の計上を行います。これはPL上で売上/仕入を認識するタイミングと入金/支払のタイミングがズレることを意味します。毎月ほぼ同額の売上、仕入を計上している場合にはそれほど問題になりませんが、資金繰りを管理する上では当月の売上/仕入分がそのままキャッシュイン/アウトになるわけではない、ということを理解した上で、入金/支払タイミングを別途把握する必要があります。

注意点②:設備投資と減価償却

設備投資を行うとキャッシュアウトしますが、PL上は認識されません(ただし、その期の減価償却は費用として認識されます)。一方で、過去に取得した設備等に係る減価償却がPLに計上されていても、それはキャッシュには影響しません。

注意点③:借入金の入金と返済

借入金の入金と返済についても設備投資と同様、PLには反映されない取引になります。近々返済の予定があっても、PLからキャッシュの動きを予想していてはこのキャッシュの動きを捕捉することができません。

注意点④:税金や税理士への支払いなど不定期なキャッシュアウト

例えば税金や税理士への支払いといった、年に一回や二回でまとめて支払うものにも要注意です。源泉徴収税の納期の特例を受けている場合は、預かった源泉徴収税が現金残高として積みあがりますが、半期に一度支払いとなるため思いのほかキャッシュに余裕があると思っていたところにいきなり支払いが発生したりしますので、適切に支払いタイミングと金額を把握しておく必要があります。

資金繰りは素人にも可能か

簡易なものであれば経理などの実務経験がなくても資金繰り表を問題なく作成、運用できます。さきほどご紹介した政策金融公庫のフォーマットを利用し、上述した注意点に気を付ければひとまず資金繰り表は完成します。大事なのはその後の精度向上です。見通した内容と実績とを比較して差異があればその要因を分析し、次の見通し作成に生かしましょう。このプロセスを繰り返すことで、精度の高い資金繰り管理ができるようになるでしょう。


当アカウントを運営しているギョータク株式会社では、副業の経理人材と企業とをマッチングするサービス「ギョータク経理」を提供しております。経験豊富な経理人材の方に多数ご登録頂いており、個社の状況や直面する課題などに合わせた最適な人材のマッチングをお手伝いさせていただきます。
初期費用0円、マッチング成功報酬0円、発生する費用は稼働に応じた手数料のみ、とコスト的に非常にお得なサービスとなっております。
経理業務フロー構築に関するオンライン相談を無料で受け付けています。当社サービスをご活用いただかなくても利用いただけますのでお気軽にお申込み下さい。
無料オンライン相談申し込みはこちらから。

P.S.「スキ」、フォロー、大変励みになります!


ウェブサイトもご覧いただけるとありがたいです!
https://gyotak.com/

いいなと思ったら応援しよう!