大人バレエ - いい先生ってどんな先生?
4歳からバレエを始めて大人になってしまってもまだしつこく続けています。
進学・就職・転職・おまけに会社を辞めて留学もしてしまったので、当然バレエ教室もいろいろ移ってきています。
以前数えたら期間の長短はありますがおおよそ15か所くらいのバレエ教室を経験していました。いろいろな先生に出会ったので、この記事ではバレエの先生について思うことを書きたいと思います。
昭和ー平成のバレエの先生
昭和生まれですが結構すぐ平成になりました。子供のころからバレエを続けている仲間同士でよく言うのが「バレエの先生って変な人多いからねーw」です。
私が子供のころに出会ったバレエの先生はだいたい年配で、目をかけている生徒に対する態度とそうでない生徒に対する態度が結構違う。
また、子供の頃からそのスタジオでバレエを始めてだんだん成長して踊れるようになってきた生徒を先生としてクラスを持たせて子供の世話をさせる代わりに舞台で大きな役を与える、ようなシステム(?)が成り立っていたように思います。
そんなお姉さま方を見て私はちっともああなりたいなとは思えませんでした。なので、プロダンサーにはなれないなと思った時点でそのシステムに組み込まれる前にとっとと全くバレエとは関係ない分野の大学へ進むことを決めました。実際大学に受かってから教えをできないかという打診を受けたのですが理系の大学に進んだので「実験で忙しいです」と言って丁重にお断りしました。まぁ本当に実験で忙しくなったので事実です。
私は実家の引っ越しや父親の転勤で4歳からバレエを始めて中学2年生くらいまでの間に3回教室を変えています。引っ越すと分かったとたんに態度を豹変させる先生、転勤先から戻ってきた私を見て「(下手になっていて)がっかりした」と言った先生、基礎丸無視の先生などがいました。
昔ながらのバレエの先生って芸術家肌の人が多いからか?自分の感情に素直というか。割りとやりようにやって言いたいことを言って今でいうモラハラパワハラ気味の先生もいっぱいいた印象です。会社勤めしてからバレエの先生になる、みたいな人もほとんどいないので、外から見るとすこし独特な世界であることは間違いないと思います。
ただ転勤先の先生以外はとにかくみっちり基礎を叩き込んでくれました。そこは今でも感謝しています。今でも足先がきれいと言われるのは一番最初に習った先生がとにかくつま先にこだわりまくって厳しく指導する人だったからだと断言できます。
平成、オープンクラスのバレエの先生
プロバレリーナの道をあきらめなぜか理系の大学で学びつつ、趣味でバレエを続けました。今ほどではないですが大人がいけるようなオープンクラスがちょこちょこあって、数か所行きました。私が行っていたところは結構子供の頃から続けているような人、または子供の頃ある程度きちんと習っていて受験の時に止めて社会人になって復帰みたいな、どこかで育った人が集まってきた感じでした。そこで一からバレエを始める人はいても少数派だったったと思います。なので発表会もかなりクオリティ高い幕ものをやったりしていました。ただその当時の先生たちは「教える」というより「場所とアンシェヌマンを提供する」ような先生たちが多かった印象です。がっつりその人に合わせて教えてくれる、みたいな場所ではなかったですね。それぞれ既に結構踊れる人たちの集まりだったので、その中で数人の遅れて始めた人たちに主に注意をして私は結構放置されていた印象です。
平成後期-令和-コロナ後のバレエの先生
コロナでオンライン指導などを海外からするようになったり、海外にいた人が帰国して先生になったり、なぜか大人のバレエが大人気になったりしてどんどんどんどんスタジオが増えて東京は飽和状態に。チャコット、マーティ、エンジェルRなど大手のオープンクラスはもちろん大小さまざまなバレエ教室があって指導者一覧を見るとほとんどの先生に留学経験があったりバレエ団員だったりして経歴が立派な人ばかりです。平成中期くらいまでは私の方がうまいのでは?と思うような変な先生も結構いましたが、今はどの先生も美しい。
ただ先生がいっぱいいすぎて自分に合う先生を見つけ出すのは難しい気がします。特に、私のように子供からバレエの場合、教室の選択はより難しくなるという印象です。大人から始める人向けのスタジオやクラスが増えて、少しレベルの高いクラスは平日の昼間にセミプロ~プロ向けで開催されているところが多いような気がします。。都内全部調べたわけではないのであくまでも私の印象ですが。
バレエがうまい=教えるのもうまい、ではない
美しく踊れるだけで言語化が上手でない先生もたくさんいます。あるいは特にオープンクラスでは全員に該当するような一般的な注意だけして粛々とクラスを進める先生もいます。
難しいのは「注意されたくない」という生徒がいるらしいということです。そういう人は注意されるとクレーム入れるのでしょうか?上手になるために来てるんじゃないのか?ここにも大人バレエのめんどうくささがあります。
私は注意してほしいです。また、どうしても経験年数が長いことが見ればわかってしまうので遠慮する先生もたまにいます。遠慮せずにご指導してくれる今のスタジオの先生たちには感謝です。
先生たちの説明の仕方も様々ですが、「こんな感じ」とか抽象的な説明よりも「これはこのためにやっていて、ここをこう動かして、ここを意識して」と論理的に説明してくれる先生に説得力を感じます。
バレエを習っていれば誰でも知っているような超有名人のレッスンも受けましたがやっぱり個別にその人にあった指導というより、全員向けの「こうしましょうねー」みたいなことを言ってレッスンは進んでいきました。オープンクラスだからかもしれません。その人主催のスタジオにコミットして行けばもう少し突っ込んだ指導を受けられるかも。
指導法とメソッドを勉強した先生がやっぱり強い
今は誰でもバレエの先生になれます。友人がバレエのサークル活動をしていますが、そのサークルのレッスンで先生の役割をするのはバレエ経験は長いけど先生になったことは一度もない会社員です。私はこういう活動はあまり賛同できません。指導者はやっぱりきちんと経験した、できれば教えることに特化した勉強をした人の方がいいと思っています。
ロシアでは教える資格を取るのに5年勉強する必要があるとか…。国家資格だと思うので日本とは環境が全く異なりますが、バレエに限らず他人に何かを教える、ということのハードルが日本は結構低いのかなと思います。
効果的に教える、と美しく踊れるはやはり別物です。ピルエットの記事で触れたのですが、バレエの先生って指導法を学んだ人ばかりではなく、バレエ団員がバイトで教えをしている場合も多いです。恵まれたスタイル、恵まれた身体の条件の現役ダンサーに教わるのは「お手本」としては良いのですがその人ができない人向けにちゃんと説明できるかどうかはわかりません。
私は足を上げることに関しては身体的に恵まれているのか、あまり苦労をした覚えはありません。逆にどこがどうなってなぜあがるのかも説明できません。
また、昔から振り覚えが良い方だったので、大人バレエの人たちがなんであんなに振り付けを覚えるのに苦労するのか正直よくわかりません。
多分今からバイオリンとか、全く手を付けたことのない楽器を習ったりしたらその苦労がわかるのかもしれませんが。
私は先生として活動しているわけではないので良いですが、先生がこんな感じだったら多分私はその先生のレッスンにはいかないだろうなと思います。どうやったら足は上がるのか、そのために何が必要なのかきちんと説明してほしい。
たまに指導法や、RADメソッドの教授法をがっちり学んできた先生に出会いますがやはり説得力がある。個人的には大人バレエほどメソッドに厳格に説明する、あるいは座学を取り入れる方がいいのでは?と考えたりします。
大人バレエこそメソッドをがっちりやるのもありでは
私は30代になってからワガノワメソッドの授業を座学で受けたことがあるのですが、1年生から8年生までの教科書があり、各学年でどんな要素をどんな音楽でどんなテンポで行うべきか、細かく書かれています。
例えばアレグロのジュテの頭の向きはどっちなのか。フォンデュの足の高さは何度なのか。1年生のロンドジャンプは何拍子でどんなテンポで行うのか。そういうことがきっちり明記されているので、できるできないにかかわらず「こうあるべき」はわかります。これを頭に入れた状態で実践する方がよりスムーズに振りが入るのでは・・。?
なぜこんなことを考えたかというと、大人からバレエの人たちを見ていて「本物のバレエを観たことないのかな?」と思うくらいめちゃくちゃなアラベスクとか、なにをやってるんだかわからないアレグロをしたり、振り付けを間違えないことだけに集中しているように見えるからです。
特に大人のアレグロはひどい。人のことを言えるほどではないですけど、ずーっと鏡をみているし、5番とかぐちゃぐちゃだし。
きちんと言わない先生にも原因はあると思いますが、アッサンブレの足は、アームスは、頭はこう!とメソッドでがちっときまっていることを頭に叩き込んでから動くと少なくとも迷いは少なくなると思うのですが。
結局いい先生って
前述のとおり注意してほしくない、という生徒もいるくらいですので、いい先生の定義は人によって異なると思いますが、私にとっては以下かなと思います。
私個人に合った注意をくれる
身体を触って修正してくれる
自分が上手になると感じられる
論理的に説明してくれる
お手本がきれい
大事にしているところが合っている
最後の「大事にしているところ」ですが、これは例えば回転数をとにかく増やす、とか、足をめっちゃ上げる、とか、ジャンプをすごく飛ぶ、みたいなところではなく、上げた足を5番に戻すときのつま先の美しさ、一つ一つのパの間で5番などポジションにきっちり入ること、アームスの動かし方、などつなぎの方を気にしているので、そこが合う先生がいいな、と思っています。
都内にバレエ教室は無数にあり、現在進行形で増加しているほどですが、仕事しつつバレエをやるとなるとすべてを見て回ることはできないし、自分が行ける範囲の中でこの先生についていきたいな、と感じるような先生を見つけるのはやはり難しいなと感じます。