金平糖は星の味
ナオミが星を拾った。夜中に落ちてきて、金魚鉢の中でパチパチ光っていたという。小瓶の中には、小指のつめぐらいの大きさの星が入っていた。コルクのふたを取り出して、机にザザーっとあけた。数えると、十粒あった。うす緑色、もも色、こがね色。こんぺいとうみたいに手足がいっぱい生えていて、ワーイワーイと手を振っているようだった。
「さわってみる?」
「いいの?」
もも色の星を一粒つまんだ。炭酸が弾けるみたいにぱちぱちっと音を立てて、手のひらをコロコロ転がった。
「かわいい」
「でしょ。一粒あげるよ」
わたしは喜んで、おそろいの小瓶を買って、星をチリンと入れた。瓶の中で、星はチリンチリンと音を立てた。
「宇宙の音だ」
真夜中の勉強机の上で、小さな星はぼんやりと光った。なんだか眠れなかったから、小瓶を耳元において、その音をずっと聞いていた。チリン、パチパチ、ピーン。なんだか愉快な気分になって、小瓶をそっと振った。その度に、星は楽しそうに歌った。その後も何度か瓶を出してきてはチリンチリンと振ってみた。星は毎回チリンチリンと歌った。
「あれ? 光ってない」
ある日、小瓶の中の星が灰色になっているのに気がついた。何度降っても、砂が舞い上がるみたいなサラサラという音しかしなくなってしまった。わたしは、おしりと胸がキューっとなるのを感じた。どうしよう、せっかくナオミからもらったのに。
「ひどい! 星を殺してしまったなんて!」
「殺してなんかない! ただ、光らなくなっただけ……」
「どうせ、歌わせすぎたんでしょ。星を殺す人はキライ! もう二度と会わないから!」
頭の中で、ナオミがワーンと泣いた。わたしは、星のお墓を作ることにした。夜の庭を掘って、小さな穴を作った。小瓶のコルクを開けて、手のひらに星を出しても、もう何も光らず、パチパチとも言わなかった。ただ、灰色のトゲトゲした砂になっていた。
「ごめんね。わたしが歌わせすぎたから」
手のひらの星に、そっとお別れのキスをした。カルシウムみたいな味がした。すると、突然パチパチっと激しく光って、星はピューんと空へ飛んでいった。わたしは呆気にとられて、青白い尻尾を伸ばす星を見上げた。
「彗星だ!」
わたしはうれしくなって、何度も手を振った。都会の空の彗星が、バイバイと手を振ったような気がした。