『年収や働き方を最優先にするな』キャリアの優先順位と、なぜ10,000時間仕事に費やすのが危険なのか(4)
はじめに:理論から物語へ―「天職活動」を実践するために
本書は、「何のために働いているかわからない」状態から抜け出し、自分が本当に輝ける「天職」を見つけるまでのプロセスを、理論と物語を交えてまとめたものだ。単なる理論書でもないし、小説でもない。両方のエッセンスを組み合わせることで、読者がより実践的に「天職活動」に取り組めるようになることを目指している。
ここでいう「天職活動」とは、「就職活動」とは異なる。「天職」とは、やりがいを感じ、楽しく没頭でき、成果を出せる仕事のこと。そして、それをただの運任せではなく、意図的に見つけ出す取り組みこそが「天職活動」だ。本書では、Z世代が抱える停滞感やミスマッチ感の背景を踏まえ、どうすれば自分に本当に合う職種や業界を発見できるのか、そのプロセスを物語形式で描いていく。
年収や働き方より、まず職種を考えるべき理由
そう思いながらも、優子はまだ腑に落ちない点を抱えていた。
「ミッションや強み、好きの話はわかりましたが、結局のところ、仕事って年収や働き方が重要なんじゃないですか? そこはどう考えればいいんでしょう?」
「いい質問だ。仕事をしていく上で年収や働き方ももちろん大事な要素だ。でも、そこで大事なのは『順番』なんだよ。
天職を見つけるためには、自分に合う商品・サービスと職種を見つけることが大事、という話をしたけど、最初に大事になるのが『職種』なんだ。職種選びが企業選びよりも最優先になる。」
優子は戸惑いを隠せない。
「職種が最優先ですか? 企業名や働き方じゃなくて…?」
明は続ける。
「なぜなら、職種は簡単に変えられないからだ。
たとえば、40代になってずっと営業をやってきた人が、突然ITエンジニアやWebデザイナーに転身したいと思っても、経験がない分、採用は難しいし、年収が大幅に下がる可能性も高い。
若いうちに自分に合う職種を見つけておかないと、後々キャリアチェンジのハードルが格段に上がってしまうんだ。
そして、自分に合う職種に就けるかどうかで、その先優子さんが活躍できるかどうかが決まってしまう。もし、自分に合う職種に就くことができたら、好きでやるから情熱を持って働けるし、強みを発揮するから自然と成果も出てくる。そうなれば市場価値も上がって、結果的に年収や働き方の自由も選べる立場になる。逆に合っていなければ、結果がついてこなくて失敗する。」優子は「なるほど。」と 頷いた。
『1万時間の法則』が危険な理由
「ちなみに、1万時間の法則を聞いたことある?」
「ええ、その分野の仕事を1万時間やれば、プロフェッショナルになれるというものですよね。私の上司もよく言います。」
「そう、その理論は間違ってないが、優子さんは合っていない仕事を1万時間も続けられると思うか?普通の人は挫折する。
仮に1万時間やりきっても、向いていなければ結果がなかなかついてこないし、向いている人には到底及ばない。逆に合っている仕事なら好きで1万時間も夢中でできるはずだし、強みを発揮しながらやるから成果もたくさん出すことができて、結果的にプロフェッショナルとして活躍できるはずなんだ。
『3年働けばわかる』といった定番のアドバイスも、今の話と同じで合わない仕事で貴重な若い時間を浪費するだけかもしれない。もし自分に今の仕事が合わないと感じるなら、早めに動くほうがいい。異動を願い出るか、転職を考えた方が長期的にはプラスになることが多い。」
この話を聞いて優子は思わずスカートの裾を握りしめた。ずっと営業職を続けたいとは思っていない自分がいるからだ。
「つまり、最初に年収や働き方を軸に企業を選ぶより、最優先は職種選びなんだよ。そして、合う職種でプロフェッショナルとして活躍していけば、将来、”会社の看板”がなくても自らキャリアを選択できる立場になれる。特に女性の場合、将来のライフイベントで働き方を柔軟に変えたいこともある。合う職種で成果を出していれば、育休・産休後の復帰もスムーズだし、活躍できる人材はどこでも求められるから、市場価値が下がりにくい。
この重要性に気づかず、学生の多くは企業名や業界、働き方を最初の軸にして就活をしてしまう。その結果、ブランド力のある大手や特定の業界に入るために一生懸命エントリーシートを書いて、面接対策をする。結果的に、入社してから仕事が合っていなくて悩むようになる。勇気を出して会社を辞めても、自分に合う仕事がわからなければまた失敗する。社会人になったらやりたいことが見つかると思っていたと口にする若者は後を絶たず、私のところにたくさん相談に来る。」明は苦笑まじりに言う。
優子は明の言葉に共感しつつも、自分のことを言われている気持ちになり恥ずかしくなった。もっとちゃんと考えて就活をすれば良かった。そう思いながらも結局自分に合う仕事がわからなくて、どう動けば良いのかわからなかった。そんな優子の心を読み取ったかのように、明がふと問いかけた。
(続く)
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