『現実は目の前の仕事をこなすので精一杯』働く目的は他者貢献で考えるべき理由(3)
はじめに：理論から物語へ―「天職活動」を実践するために
本書は、「何のために働いているかわからない」状態から抜け出し、自分が本当に輝ける「天職」を見つけるまでのプロセスを、理論と物語を交えてまとめたものだ。単なる理論書でもないし、小説でもない。両方のエッセンスを組み合わせることで、読者がより実践的に「天職活動」に取り組めるようになることを目指している。
ここでいう「天職活動」とは、「就職活動」とは異なる。「天職」とは、やりがいを感じ、楽しく没頭でき、成果を出せる仕事のこと。そして、それをただの運任せではなく、意図的に見つけ出す取り組みこそが「天職活動」だ。本書では、Z世代が抱える停滞感やミスマッチ感の背景を踏まえ、どうすれば自分に本当に合う職種や業界を発見できるのか、そのプロセスを物語形式で描いていく。
「他者貢献」は自己犠牲じゃない：幸福感を生む真理
「でも、仕事って自分のためにするものじゃないですか？他者貢献まで考えて仕事できる自信がありません。」
「他者貢献は決して自分を犠牲にすることじゃない。むしろ、自分自身の幸福感を高める行為なんだ。多くの研究結果や書籍でも、人が人生の達成感や幸福感を得る最大の要因は「日々の努力が他者の生活をどれだけ良いものにしているのか実感すること」だと示している。他者貢献が自分の人生を幸せにするということは、世界的なベストセラーである「７つの習慣」や「聖書」でも書かれている真理だ。
企業がミッションを掲げ、それを実現するために事業を展開するように、他者貢献を軸にミッションを定めれば、どんな商品・サービスが必要なのか、どの業界や企業で働くべきかが見えてくる。会社側も、ミッションに共感できる人材を求めている。ミッションが合わないと、働くモチベーションは低下しがちだ。
要するに、自分のミッションを明確にすれば、心から提供したいと思える推し商品・サービス、企業が見えてくるということだ。」
明の話を聞きながら、優子は自分がミッションを持っていなくて、1人目の職人のように、ただ目の前の仕事に取り組んでいるだけであることに気づいた。こんなふうに働きたいといった自分の理想について考えたことはあるが、他者貢献を軸とした働く目的は考えたことがなかった。考えていた時もあったかもしれないが、結局日々の忙しさに忙殺されていた。ミッションが今の会社と合っていないからやりがいを感じられていないことを、なんとなく理解することができた。
でも、自分のミッションが何なのか、まだはっきりとは分からない。それでも、明が言うように、ミッションを持つことで、今のモヤモヤした気持ちから抜け出せるのではないかという希望が生まれていた。
「強み」と「好き」の違い―本当に合う職種を見つけるカギ
「ミッションはよくわかりましたが、強みと好きって何が違うんですか？」
「強みと好きは似ているようで違うんだ。強みっていうのは、自然とできてしまうことで、無理なく自信を持ってできることなんだ。周りからは『どうしてそんなに簡単にできるの？』って言われるけど、本人にとっては当たり前すぎて気づかないことも多い。
一方で、好きっていうのは、ただの興味や関心じゃなくて、夢中になって楽しくできることだ。時間を忘れるくらい没頭できるものだ。
強みがあれば成果を出せるし、好きなことなら夢中になって楽しくできる。この2つをかけ合わせれば、本当に自分に合う職種を見つける手がかりになる。」
自己理解×仕事理解でわかる、自分に合う職種
優子は自分の強みと好きについて少し考えた後、ふと思い浮かんだ疑問を口にした。
「確かに強みと好きを持って仕事ができたら理想ですが、そんなことできる人はごくわずかの人じゃないですか？仕事って選べないし、現実は目の前の仕事をこなすので精一杯です。」
「そんなことはない。ほとんどの人が自分にあった職種に就けていないからそう思うだけだ。人はみんな顔形が違うように、資質もみんな異なる。だから、まず自分の資質を深く知る『自己理解』が必要になる。これが第一のハードルだ。
さらに、職種によって基本業務や求められる資質は異なるから、『仕事理解』も欠かせない。法人営業なら顧客ニーズの把握、Webエンジニアなら正確な情報伝達力…こうした要件を知り、自分の強みと好きに合った職種を探す。
自己理解と仕事理解のマッチングによって、誰でも自分に合う職種に近づける。」
優子はその話を聞いて、もっと自分の可能性を広げられる気がする…もっと知りたいと、新たな一歩を踏み出したいという強い思いが芽生え始めていた。
（続く）
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