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『社会人になったらやりたいことが見つかると思っていた』 Z世代のキャリアの悩みと天職の見つけ方とは(2)

はじめに:理論から物語へ―「天職活動」を実践するために

本書は、「何のために働いているかわからない」状態から抜け出し、自分が本当に輝ける「天職」を見つけるまでのプロセスを、理論と物語を交えてまとめたものだ。単なる理論書でもないし、小説でもない。両方のエッセンスを組み合わせることで、読者がより実践的に「天職活動」に取り組めるようになることを目指している。

ここでいう「天職活動」とは、「就職活動」とは異なる。「天職」とは、やりがいを感じ、楽しく没頭でき、成果を出せる仕事のこと。そして、それをただの運任せではなく、意図的に見つけ出す取り組みこそが「天職活動」だ。本書では、Z世代が抱える停滞感やミスマッチ感の背景を踏まえ、どうすれば自分に本当に合う職種や業界を発見できるのか、そのプロセスを物語形式で描いていく。

1話目はこちら。


Z世代がキャリアでよくある悩みとはー月山明との対面


その夜、優子は緊張しながら照美との待ち合わせ場所に向かった。レストランに入ると、端正な顔立ちの50代半ばの男性が、すでに席についていた。濃いグレーのスーツに赤いネクタイ、黒縁メガネの奥から覗く鋭い眼差しは、長年のキャリアが培った確かな知見を感じさせる。背筋をピンと伸ばした姿勢からは、揺るぎない自信と威厳が漂っていた。

「はじめまして、田中優子です。」
緊張して挨拶する優子に、明は威厳のある低い声で返した。
「よろしく、優子さん。照美さんから話は聞いている。」

その視線に射抜かれるような気がして、優子は自然と姿勢を正した。彼の視線は一瞬の迷いもなく、自分の中に抱えている迷いや弱さを見透かされているようだった。
「何のために働いているのかわからない、それが君の悩みか。」
優子は明の威厳ある声と視線に冷や汗をかき始めた。その様子を見て明は
「優子さんのペースで構わない。ゆっくり考えて、話してみて。」

優子はハンカチを取り出し、少し落ち着いてから自分のことを話し始めた。
「はい…。ずっと営業の仕事をやってきて、それなりに結果も出せてるけど、正直、何のために働いているのか分からなくなってきてて…。」
明は軽く頷きながら、さらに問いかけた。
「なるほど。最初はどうして今の会社を選んだのかな?」
「…そうですね、思い返すと、親の目を気にしてたんだと思います。両親の期待が大きくて、大手企業で安定した職を得られれば安心だろうって。実際、両親はすごく喜んでくれて、私も最初はそれで良かったと思っていました。当時、自己分析も少ししましたが、結局入りたい企業に合わせて自分の価値観や強みを作ってしまい、本当の自分がわからずに就職してしまいました。学生の時にやりたいことも特になかったので、やりたいことが見つかったらそちらに行けるように無難な職種と業界を選んだんです。社会人になったら自然とやりたいことが見つかると思い込んでたんですけど、実際は忙しい日々に流されるばかりで、やりたいことなんて見つからなくて…気づけばずるずる今に至ってしまいました。」

明は優子の話に耳を傾けながら、穏やかに頷いた。立て続けに次の質問を投げかけた。
「入社した後はどうだった?」
「総合職で採用され、その後配属先は法人営業の仕事になりました。最初は頑張ろうって思って、自分なりに努力をして、売上目標を達成した時もありました。でも、だんだんノルマを達成することにモチベーションが上がらなくなってきて、法人営業が自分には向いていないと感じ始めたんです。そもそも、この商品を売って本当にクライアントを喜ばせられるのか疑問で…。転職も考えたこともあったけど、気づいたらズルズル今の仕事を続けてしまっています。
今思えば、最初の違和感を無視してここまで来ちゃったんですよね…。職場の人間関係も悪くないんだけど、心の中ではこのままでいいのかなって思うことが多くて…。ただこなしているだけの日々を過ごしていて、あまり成長している実感も持てず、ふと休みの時に結婚とか将来のことを考えると、ますます不安になっちゃいます。」

明は頷きながら、優子の言葉に真剣に耳を傾けていた。優子が自分の胸の内を少しずつ整理し、口に出すことで、彼女の抱えていた不安が形を持っていくようだった。続けて明が質問した。
「それは不安だね。理想としては、どうなっていたい?」
「できたらやりがいをもって楽しく仕事がしたいです。そして年収も上げたいです。それに、月曜が辛いっていう状態から抜け出したいです。仕事が辛いとプライベートも心から楽しめなくて。やっぱり仕事が充実してこそプライベートも充実すると思います。リモートワークなんかもできたらいいなと思います。」
「わかった。そしたらまず天職の見つけ方について解説する。」

天職の見つけ方

優子は尋ねた。
「天職って何ですか?」
明は穏やかな表情で答えた。「天職とは、やりがいを持って楽しく没頭して成果が出せる仕事のことだ。ただし、これを偶然見つけられる人は少ない。8割以上の人は何のために働くのかわからないまま、毎日を過ごしている。」
明はカバンから紙とペンを取り出し、図を描き始めた。

「天職を見つけるためには、仕事を『商品・サービス』と『職種』に分けて考えることが大事だ。そして、商品・サービスに自分のミッション、職種に強みや好きなことが繋がってくるんだ。」


天職の見つけ方の図


優子は少し困ったように尋ねた。
「ミッションって具体的にどういう意味ですか?正直、漠然としていてよくわからないんです。」
優子は眉をひそめながら率直に尋ねた。
「ミッションっていうのは、簡単に言えば『仕事を通じて成し遂げたいこと』、つまり働く目的のことだよ。これがやりがいを生み出すモチベーションの源泉になる。

会社にもミッション・ビジョン・バリューが存在する。ミッションは会社の使命や存在意義を意味して、ビジョンはそのミッションを実現していく中での未来を定義する。そして、バリューは会社がどんな価値観でビジョンを達成していくかを明文化したものなんだ。私は会社だけでなく、個人のキャリアにおいても、自律したキャリアを築くためには同様に必要だと思っている。特にミッションが重要なんだ。」
明は優子がまだ腑に落ちてなさそうな表情を察知し、さらに詳しく説明を続けた。

働く目的の違いが仕事のやりがいを変える3人のレンガ職人の話 

3人のレンガ職人の働く目的

「そして働く目的の違いが、どれだけ仕事にやりがいや充実感を持てるかを左右するんだ。その良い例が『3人のレンガ職人』の話だ。ある旅人が、レンガを積んでいる3人の職人に、『何をしているのか』と尋ねたんだよ。最初の職人はこう答えた。『何って、見ればわかるだろう。レンガを積んでるんだ。朝から晩まで、腰が痛くなるし、手もひび割れて、ついてないよ。』ってね。彼は、ただ目の前の作業をこなしていただけだったんだ。

次に2人目の職人は、こう答えた。『俺は大きな壁を作っている。賃金がいいからやってるんだ。』彼は働く目的を持っていたけど、それは単にお金のためだけに働いているに過ぎなかった。

そして3人目の職人はこう答えた。『俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っている。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払う場所になるんだぜ。』彼の働く目的は、後世に残る偉大な事業に参加し、町の人々に貢献することだったんだ。これが彼のミッションになっている。

3人とも同じレンガを積む仕事をしているんだけど、働く目的が違うことで、彼らの働き方や感じ方も全然違うよね。3人目の職人は、ミッションを持っていることで自分の仕事に意味を見出し、生き生きと働いているのがわかる。
もう一つ、3人目の職人が違うのは、他者貢献を軸に働く目的が作られている点なんだよ。誰もがこうなりたいという理想はあったりするけど、他者貢献を軸に働く目的を作れている人は少ない。他者貢献を軸にすることで、それがミッションと言えるようになるんだ。」

優子は質問した。
「でも、仕事って自分のためにするものじゃないですか?他者貢献まで考えて仕事できる自信がありません。」

(続く)


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