恋愛小説:ハチミツ
「なんか不思議ねー。こうして考え方も性格も全く違う二人がこうして一緒にいるってこと。」
「そうだねー。」
夜も更け、季節は秋。
涼しくなってきた夜風を浴び、僕らは散歩する。
分かれ道が出るたびに
「どっち行く?」
「こっち」
みたいな感じで、町をあるく。
このごろ、ようやくお互いのことがわかってきた。
僕らが付き合ってから6か月目。
きっと、どこかで完全にわかるなんてないんだろうなとこの頃思う。
なぜなら、人はその時々で変わっていくから、その時々で理解しなきゃいけないんだろうなって。
そう思う。
だから、最近はこう思うようにしてる。
今の僕ら、お互いがそれぞれ違っているのは、あくまで今。
これから、二人で長くいるのなら、その先の僕らは、きっとその先でしか出会えない僕らなんだと。
だから、僕はけっして今の僕が、今の君がすべてだとは思っていないんだ。
この先の道で、二人がどんな風に気づいたり、歩み寄ったりしながら二人だけの僕らになっていくのか、とても楽しみなんだ。
「お、コンビニだ。寄ってこうか」
「うん。」
彼女はアイスコーヒー。そして僕が紙パックのルイボスティーとお茶。
先に買い物を済ませた後、外で彼女を待つ。
「おまたせ」
そういうと彼女はコーヒーを持って出てくる。
すると遠くで雷が鳴る。
「雷だ」
「引き返そうか」
「そうしよう」
夜の道は街頭が暖かく照らしてなんだかほっこりした。
彼女の家に着くと、僕は帰る支度をする。今日は、はるばる車で彼女の家に来たのだ。
「じゃあ帰るね」
「うん」
靴を履いて玄関のドアに手をかける。時刻は夜10時を回る。
「ねえ、コーヒー店行かない?」
僕の思いつき。というか、ただ単純に彼女ともっと一緒にいたいがための言葉だった。
「いいよ」
時間は夜の10時。
コーヒー店につくと、閉店は夜の11時だとつげられる。
「いいよね」
「うん」
赤いふかふかのソファーに向かい合って座ると、二人で同じものを頼んだ。
夜のコーヒー店は、店全体が夜の空気をまとう。
「なんかさ、たまに、美里のことが信じられなくなるんだよね」
「どうして?」
「美里って気を使って思ってもないこと言うんだもん」
「そうなのよねー。わたしって合わせちゃうのよ。」
「そうなんだよね。だからいつも僕はそれが美里の本心なのか、それとも気を使っているのか、わからなくなるんだ」
「でも、あなたに対しては本音言えてると思うわよ」
「そうかい?」
「うん」
「信じていい?」
「うん」
「わかった。」
「実は最近なんだ。美里のそういう特徴にきづいたのは。美里はまえまえから、私はこういう人だって言ってたろ?それで言葉でいわれたことがようやく実感できるようになってきたというのが」
「うん」
「そこで、僕はこう思うんだ。君が僕にとって都合のいいひとであってほしくないってね」
美里の目はまっすぐ僕に向いていた。
「僕の目標教えようか?」
「うん。教えて?」
「美里が笑顔で、生き生きと、いたい自分のままでいらられること」
僕は、思わず言葉に詰まりそうになる。
「うん。」
「でも、私、結構言いたいこと言えるようになったわよ」
「お!ほんと?それは、すっごく嬉しい。」
6か月、僕らにとってその期間はハチミツの輝きに似た。