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短編小説:女王に称号を与えられた男
僕は貧しい
しかし子どももいて愛する妻もいる
彼らを裏切ったことなど一度もない。
俺は豊かだ。
全てを謳歌している。
うまいものを食べ最高級の布団に寝る
抱きたい女は抱き、そいつらにも幸せを与えているのさ
ある時彼らは会話する機会を得た。
「君と話していると面白い。今度私の船に招待しよう」
「お誘いありがとう。しかしごめんなさい。私はそのような場所には似合わない。」
「いいや、ぜひ来てくれ。君の家族も一緒にだ。心ゆくままにもてなそう」
「家族もですか。では、私の最愛の妻と息子を連れていきましょう。」
そう言うと二人は帰っていった。
ある晩貧しい家族は船に招待された。
「よくぞ来たな!ほらほら君の席だ。家族も座り給えよ。」
「ありがとうございます。」
「凄いです」
その後家族だけになった時彼は恐る恐るこういった。
「すごい光景だね。しかし私には合わないよ。息子を連れて回っておいで」
「坊や。行ってきましょうね」
そうすると息子を連れて妻は人混みの中へと消えていった。
その夜その家族は家に帰るとこういった。
「あの時は言えませんでしたけど私にも合いませんわ
。やはりこの小さなテーブルで囲む食卓が何よりも嬉しいの。」
「僕も分不相応だとそう思ったよ。君たちにいい思いをさせたくて参加したがもう参加するのはやめよう」
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それから長い年月彼らはおだやかに、ささやかに過ごしていました。
それからある晩、彼のもとに一通の手紙が届きます。
宛名はありませんでした。
彼はそれを開くと住所が書かれていました。
そこにはこう書かれていました。
「こんにちは
あなたに会いたい
服装は今できる一番いい服装で
おいでください
ーー女王ーー」
僕はそれを初めは信じることができなかった。
それを市役所に持っていくと、市役所職員はその手紙の印を見てこういった。
「これはいけない。これは女王に使う印で間違いない
今すぐその場へ行きなさい」
私は大変だ!そう言い家族を連れてその場所に行った。
「ようこそ。大変でしたね。
お入りなさい」
そこにいたのは女王だった。
彼らは深々と頭を下げ膝まづく。
「さっあなたも頭を下げるのよ」
そう言うと息子に深々と頭を下げさせる。
「いいのよ。さっこちらへ。頭をお上げなさいな」
しばらくして部屋の中へ通された。
するとたくさんの兵士たちがきれいに整列している。
私達は恐れ多いとそのなかを通ってゆく
女王は座られた。
持ってきなさい。
するとおつきのものが横にはけ何やら持ってきた。
それは、三人の顔の掘られた小さな銀のメダルだった。
「さあ、こちらへ」
彼は恐る恐る女王の前に向かう。
「これをあなたに。」
そう言うと彼は深々と頭を下げた。
「さあ、何かありますか?」
「女王陛下、失礼を承知で申し上げます。私はこのような賞、身に覚えがありません。なぜ私なのでしょうか」
「あなたに見せてあげましょう」
すると女王は奥の部屋へと彼を連れて行った。
そこには青い地球儀のようなものがあり、そこにはぼんやりとしたものがその周りをまわっていた。
「これは?」
「地球儀です」
「私と何か関係が?」
「これは、魂の重さ、美しさを見える化したものです。」
女王は微笑む。
「あなたの魂はこれよ」
それは黄金の麦畑を思わせる玉に何とも言えない色をした細い美しい糸が玉の周りにまとっている。
きれいだ。
「この魂はね。妻を愛する心、家族をいつくしむ心、そうして貧しさのなかでも輝きを失わない清貧の色よ。
奥様を大変愛してらっしゃるのね」
「はい。自慢の妻です。私にはもったいない女性なのです。心の底から深く愛してやまないのです」
「恐れながら女王陛下。もう一人賞を与えてほしいものがあります」
「それはどなたですか?」
「私みたいなものを船に誘ってくれたものです」
「彼は値しません」
「この魂を見なさい」
「なんと」
「彼の価値は私たちの世界では高くありません」
「家族を顧みない行動、愛する者の裏切り、その他のもので彼は混沌と苦しみの中にいます。人為的権力者の立ち位置にいる資格はありません」
「そんな!あんまりだ!彼は私に良い思いをさせてくれたのです」
「自分の行いは何より自分が知っています。それに罪の意識を感じ罰を下すのもまた自分なのです。私にはどうすることもできません」
「なんということだ」
「正しく美しく生きる意味はあるのですよ。あなたの心の安寧がその証拠ですよ。」
かれはその後家族の元へ戻ると家族にキスをした。
「あなた、どうしたの?」
「愛しているよ。僕の永遠の妻」
「ぱぱ。だっこ」
「愛しているよ。僕ら二人の愛の結晶」
そうして改まってまたひざまずく。
「心豊かにお生きなさい。あなたたちに心からの安寧を。」
女王はそう言うと、席を立った。
僕らはよろよろしてしばらくその場に佇んでいた。
送迎をことわり、僕らは歩いて帰った。
その間肩を寄せ合い大事に抱えて帰った。
その後彼はそのことを話さなかった。
そして、彼らのリビングの棚に一つの銀のメダルが。
その後その家族はつつましやかに、そして暖かく暮らすのでした。
生活は前よりは豊かになりました。
けれど忘れないのでした。
なにをって?
あなたの心に問いかけてみて。