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まちの時計屋さん


腕時計を見て生活することが無くなってしまった私ですが、やはり外出中に必要な場面もあり、今年になって久しぶりに腕時計を購入しました。

20年以上愛用していたSEIKOルキアがとうとう動かなくなったので、手頃なSwatchアイロニーをネット通販で。濃いブルーの文字盤が気に入っています。アナログ時計が好きです。
でも、1年も経たないうちに電池切れなのか止まってしまいました。
保証書をどこかにやってしまったので地元の時計屋さんへ電池交換を頼みに行きました。
ルキアが元気な時に10年くらい前電池交換をしてもらった記憶のあるお店です。  

昔ながらの商店街の片隅。目立たない店構えの自動ドアを入ると、失礼ながら想像を超えたパリッとした雰囲気を感じました。
というのは、他の地元の個人商店で、色褪せたポスターやホコリの被った造花の置いてあるような店を見たことがあり残念な気持ちになったことがあったからです。 
しかし、このお店は古くても隅々まできれいでとても清潔感があり、明るく感じたのです。

個人商店あるあるで、そんなパリッとした雰囲気でもお店の方がいない。
「お早うございます、すみませーん」
80歳前後の男性店主さんが、買ったばかりのような生花をひと束握って現れました。
開店時間からすぐだったので、ちょうどショーケースの上に置く花瓶に花を生けるところだったようです。
電池交換をお願いすると快くすぐ作業に入っていただけました。

店主さんの作業中に8畳間ほどの店内を見回すと、右の壁にはピカピカの掛け時計が10ほど並んでいて揃って正確な時間を刻み、左の壁には新しい商品のポスターがスッキリと貼ってあります。
右壁の手前にある明るいショーケースの中には腕時計が何点か置かれており、
間に金色の松ぼっくりが添えられてクリスマスらしさを演出しているようでした。
こんなお歳なのに、長年こうやって静かに続けて来られたのだろうか、とお店の歴史に思いを馳せてしまいました。
透明な細い花瓶に生けられた花は、シャッキリと上を向いたピンクのガーベラ2本と白に紫模様の入ったアルストロメリア。
言うなれば機械ばかりの店内に、生花があるだけでこんなに清々しい気持ちになるだろうか、とか
たった5分位のあいだに心が洗われてしまいました。
代金1200円を払い店を出ましたが、このお店に今日はお客が来るだろうか?と余計なお世話なことを考えて帰宅しました。こういうお店がずっと続いて欲しいなと心から思いました。


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