天国に持っていきたいレコードと遺したいレコード
☞JUNGLE LIFE (30.’98)より
『BGM』、 『テクノデリック』YMO
僕が音楽の道(或いはテクノ道)にのめり込むきっかけとなったYMO中期のアルバム。ビートルズで言えば『サージェントペパー…』『マジカルミステリーツアー』にあたるのかもしれない。発売当時、小学6年生だった自分にとって音楽そのものの深さを初めて感じた。多くの人と同様に前年の『ソリッドステイト…』『増殖』でYMOを好きになったが、振り返れば、これだけの衝撃では音楽をやろうという気持ちまでにはなれなかったかもしれない。 『BGM』 はそれまでのファンを裏切る実験的な内容だったが、僕にはさらに高度に飛躍した世界を感じることが出来た。つまり僕自身はガッカリも困惑もしなかった。意識的に買いに行った初めてのレコード。『テクノデリック』はその世界をさらに展開させたアルバムで、今思えばサンプリングというものとの出会いであった。また、ファンクや民族音楽的な要素もテクノに昇華出来るという新しい発見があった。大袈裟に言えばこの世の音楽はすべてテクノに取り込めるという考えも抱いた。発売日の夕方に買いに行って即ヘッドフォンで聴き入ったのを今でもよく覚えている。
『暴動』、『輪廻』SLY & THE FAMILY STONE
実際はYMO以前の時代のアルバムだが、聴いたのは18歳位の時だった。YMOが影響、或いは手本にしたアルバムと予測するに値するものだと思う。『BGM』『テクノデリック』的な世界と似ている、或いはその根源的な類似性を感じた印象であった。また、JBのファンキーさとはまた違ったアプローチで随所に感じとれるエグイ感触は僕自身、当時ドラムを叩いていたこともあってかなり影響された。いわゆるかっちょいいフレーズ(特にベースラインやドラミング)はこういうものかとお勉強させてもらった。YMOとの類似性といえばリズムボックスを基調としながらも、そこに生の肉体感覚をプラスするといった発想がまた興味深い。例えばリズムは完璧にジャストではなく、そこに多少のズレを生じさせることでグルーヴさせるというリズムの極意みたいなものとか。テクノとブラックなビートの感覚はこれで完全に自分の中では一致した。
『DUMMY』、『PORTISHEAD』PORTISHEAD
僕自身の感覚で言えば70年代がスライ、80年代がYMOとすれば90年代はポーティスヘッドかもしれない。勿論、THE ORBみたいなアンビエントテクノ他沢山、面白い音楽はあるが、衝撃或いは天国となるとこれになる。ハイファイの行き先の果てはローファイだった等という解釈も含めつつ、考えさせられる音楽である。一応ボーカルものの体裁はとっているものの、サウンドプロダクションは他に類をみないくらい独特。その美意識とテンションは、平坦な言い方をすれば、多種多様化された現在の世紀末的な状況に最もマッチするサウンドだと思う。