ジョルジーニョが見せた世界トップレベルのポジショナルプレー。(楽天カップ)
2-1でチェルシーが勝利した楽天カップ。
スタジアムに詰めかけたファンは高額なチケット代に見合った大味展開を見られなかったことで肩透かしを食らったのではなかろうか。それだけ地味な試合だった。
この試合、チェルシーには高レベルなポジショナルプレーを見せる選手がいた。ほかでもないジョルジーニョである。
①リキプッチとセルジロベルトをほぼ封殺
前半の大半のシーン。ジョルジーニョが的確に中盤でパスコースを動きながら消すせいで、ブスケツから中盤の深い位置まで縦パスが入らない。攻撃のスイッチを入れる合図でもある縦パスが入らなければ、トップ下の選手が無理やり前線へ運ぶしかない。この役割を担ったのがリキプッチである。個人突破、サイドへの縦パス、さらにはペナルティエリア内でのヒールフリック。本番レベルのスペースでチャンスメイクができることを証明した。イニエスタとシャビを掛け合わせたような才能である。だが彼個人では限界があった。仮にパスが入っても、散らした先のサイドでデンベレが度重なるミス、デビュー戦のグリーズマンとは噛み合わず、左サイドはジョルディ・アルバに任せているものの、低弾道クロスとリターンが返ってこない。セルジロベルトはコバチッチとジョルジーニョに消され、組み立てを一人ですることになった。
②セルヒオ・ブスケツの認知力を上回るポジショニング
WOWOW実況の柄沢晃弘さんはチェルシーの得点シーンを実況する際、「ブスケツ、見ていない所へパスを出してしまった」と述べていた。
結論を言おう。彼は見ていたのだ。しかしその上をいかれた。動画は荒いが下記ツイートをご参照願いたい。ブスケツはオフザボールの時点で首振りだけで少なくとも3回、左右を確認しボールを受けている。ジョルジーニョはそれを承知で、ブスケツと己のビジョンを照らし合わせ、「ブスケツはボールを受けた後、ジョルジーニョの方向に出すのは避けたい」というプレー原則の仮説を立てる。
ブスケツが自分の周りを完全にスキャンし、ジョルジーニョが近づいていることを見越して接近されている方向と逆にターンした。その決定をする頃にはジョルジーニョは修正を終えており、パスのタイミングを見計らっていた。結果カットできたのは、ブスケツがミスをしたからではない。ジョルジーニョが完全に読み切り、ポジショニングを正確に修正したからだ。凄まじいサッカーIQである。
しかも彼はご存知の通り、デフォルトでCB寄りにポジショニングしている。あそこまで前線に上がってきた時点で取り切れば、斜め前にいるアブラハムがいきなりチャンスになる。ジョルジーニョは自分のシミュレーション通り完璧に遂行した。
③安定したパス回し
ジョルジーニョに加えて、レアル時代に割りを食っていたコバチッチが本来の調子を取り戻し、相乗効果でパス交換の質が上がる。昨シーズン3000本以上のパスを供給したチェルシーの5番は、その後完全にチームの選手の位置関係をコーチングとパスで調整し続ける。結果、バルセロナは中盤での支配力を失い、ほぼ完全に沈黙した。唯一孤軍奮闘したリキプッチは、個人技術の高さと視野の広さを証明できたが、チームの勝利には結び付けられなかった。
総括
ジョルジーニョの地味ではあるが高レベルなポジショニングで、バルセロナに試合をコントロールさせなかった。リキプッチは奮闘したが、その後も決定力と局面打開力を見せられず、さらにプレーを制限されたバルセロナは巻き返せなかった。
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