短編小説🍸映画BARローマの休日(14)
「こんばんわ。1人です。」
そう伝えると、とっきーは店内を見回しながら
「今日は予約の方がいらっしゃるので、こちらでもよろしいですか?」
と、ゆきの隣へ座るよう促してきた。そう、やはりゆきだ。ヘアスタイルは違うが、横顔がゆきそのものだ。多少、身体が強張るのを感じながらゆきの隣に座った。
「あの…ゆきさん、ですよね?」
おそるおそる声をかけると、ゆきはにっこり笑ってこう返した。
「残念ながら、私、はるかです。」
そうか。今夜は綾瀬はるかか。ある意味、変わっていない。この前のことを何と言おうか考えているうちに、とっきーに話しかけられた。
「ちょっとお久しぶりですよね、3週間ぶりくらいですか?」
「そうだね、ちょっと仕事が立て込んでて、なかなかね…。」
と、たわいもないやり取りをしつつ、ビールを頼んだ。
「ビールですか?映画BARなのに!」
とゆき、いや、はるかがケラケラ笑っている。
そうか、またここからか。僕は彼女が何をしたいのか察したつもりになって、おつまみの柿ピーを口に運んだ。
(15)へつづく
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