栗と柿と冷静な査定19
彼にスマホを取り上げられたので、少し不機嫌になりながら、彼の横を歩いた。
(この人、結構モラハラタイプ?)
などと思いながら、ちょっと嫌じゃない自分もいた。
(私も大概Мやわあ)
とため息をつきながら歩くと、彼が急に止まった。
「ごめん!ちょっと仕事の電話!」
「はーい」
彼は少し離れたところに行き、なにか話し込んでいた。
(プロジェクトが佳境で激務って言ってたもんな。休みの日まで大変やなあ。)
そんなことを思いながらボーっと待っていたら、目の前をヨーロッパ系の旅人が横切った。
明らかに何かを探している様子で困っていたので、つい声をかけてしまった。
「Can I help you?」
旅人は嬉しそうな顔で「Yes!!」と答えた。
そんな私達のことを、電話しながら彼はじっと見ていた。
「ちょっと、先輩すいません、彼女が変な外人と喋っているので一旦切ります。」
「おう。お前も大変だな(笑)」
「はい。あの子、全然俺と結婚する気ないみたいなんですわ(笑)一応、結婚を前提に付き合ってほしいとは最初にいったんですけどね。すぐ他の男に目移りするみたいで油断ならんですわ。」
「あー(笑)まだ若いもんな(笑)」
「そうなんすよ。俺が育てないと😅」
「ま、いいから行ってやれ」
「あざす。ほなまた!」
電話を切ると彼は駆け足で彼女の方へ向かった。
「お待たせ!どしたん??」
「あ、今ねー道案内してたんやー。久しぶりに英語話して楽しかった(^o^)笑」
彼女は知的興奮で頬を赤らめていた。
(くっ、かわいいな、くそ)
彼は今すぐ彼女を抱きしめたくなる気持ちを抑えて、こう言った。
「TOEIC何点なん?英語得意やったんな?」
「960だよー言ってなかったっけ?」
彼は内心びっくりしたが、口ではこういった。
「ふーん。まあまあやな(^^)」
そして2人はまた歩き出した。今度は彼女から彼の腕を掴んだ。
奉還町の夜はどんどんふけていった。
つづく