ネットワールドアパートメント~601~
ようこそ。
あなたもだいぶこの【ヒトのセカイ】を覗くことが癖になってきているようですね。
そんなあなたも誰かの【ヒトのセカイ】。つまり、ここの住人ともいえることをお忘れなきを。まぁ、ここの住人であったところで、自分のどこの部分を見られているかはわかりません。
現実逃避をしているところを見られているかもしれませんし、人生の瀬戸際に立っているところを見られているかもしれませんけどね…。
有名になりたい。
売れたい。
誰しも知っている人物になりたい。
それは同時に自分が自分でなくなる。
自分という軸は消え去る。
自分が消え去ったその肉体は何者なんだろうか。
その肉体を自分という魂が客観的に見ている。
なんで目指すときに気づかなかったんだろう。
このままじゃだめだ。
そうだ。
遠くに行こう。
そして誰も知らないところで誰も知らない素の自分を楽しもう。
そうしないと肉体までも消えてしまう。
過去の自分と同じことをしようとする。
今はそんな感覚にとらわれている。
飛行機に乗り日本の南のほうまで来た。
ここまで来たら、東京のローカル番組でしか活躍できなかった俺にとって見つかることはないだろう。
地方も地方に何も考えずに飛行機に乗り、住むところ、仕事も考えずに飛んできてしまった。
さすがに、海外まで行くことは考えきれなかった。いっそのこと行けばよかったのだろうが、意気地なしな自分にやんわり嫌気がさした。
ピロリン
ーーー
お疲れ様です。
単刀直入に申し上げます。
電話連絡もなく、自宅にもいない。メールも既読にならない。
私も社長もとても困ってます。
事件に巻き込まれてないか、意図的に逃げたのかどちらでも構いません。どちらにせよ、無事なればこのメール既読にするだけでも構わないのでよろしくお願いします。
ーーー
なんて心のないメール。
こんな雑な扱いだから、俺は嫌になったんだよね。
でも捜索願とか出されるのも嫌だし、既読だけつけておこう。
そしてそのあとは一切かかわらない。
自分の心を満たすまでは。