テレビドラマの悪役の定番:政治家と 高級官僚

前回で映画に見る女性の理想像について書きましたが、今回はそれと似たようなテレビドラマの悪役の定番について書きます。昔はヤーさんが悪役の定番だったかもしれませんが、今やダントツにテレビで人気がある悪役は政治家と高級官僚でしょう。その次辺りに一流大企業の要人が入ります。「オレオレ詐欺」の実行グループいじめグループなどもある程度ありますがそれほど盛り上がりません。刑事、ミステリーものでは刑事たちが一生懸命悪いやつらを探して、捕まえるのですが、やがてわかってくることは、その裏にもっと、もっと悪い政治家とかをはじめとしたいわゆるエリートたちがいて、捕まえた悪いやつらを利用して私腹を肥やしていて、最初の悪いやつらはかわいいものというメッセージ。ドラマに、彼らエリートたちが、いかに悪いやつらかということを強調するため、必ずと言っていいほど、大きな豪華なオフィスでゴルフのパッターの練習をしながら、ほかの悪いエリートたちと話すシーを入れます。真面目に仕事をしているシーンなどは絶対入れないのです。同じ趣旨で、赤坂あたりの料亭で、キレイどころをそばに置き、ふぐとかカニとか大トロとか庶民がせいぜい一年に一回程度お父さんの誕生日なんかにしか口にできないものをガツガツ食べているシーンもよく出てきます。食べながら、警察の幹部に電話し、自分たちの悪だくみがばれないように圧力をかけるのです。これが非常に多くのドラマの筋書きです。歴史的にはこの定番の筋書きが大人気を得るようになったのは、松本清張のようないわゆる社会派のミステリー作家が出てきた昭和40年代あたりでしょうかね。

興味ある疑問はなぜこのようなドラマがすごく人気があるかというものです。これは優れた社会学的、政治学的な疑問で、なぜトランプのようなポピュリスト政治家がいろいろな国で近年台頭するようになったかにつながっています。定義によっても大多数の国民はエリートではないのです。多くの庶民は赤坂などにはいかず、家でつつましい食事をとりながら、キレイ所を我慢して、古女房と一緒にテレビドラマを見るのです。庶民はほとんどエリートの生活などは知らず、そして知らないとなんかろくに仕事もしないで、暇だから、悪いことばかり企んだり、実行したりするに時間を費やしている、と思ってしまうのです。このような前提条件があるところへ、テレビドラマでエリートの”実態”を見て、庶民が想像していたことは当たっていたのだとなってしまうのです。そして、ドラマの最後のほうで、これらのエリートが殺されるなり、自殺するなり、監獄に一生入れられるなりするともうテレビ視聴者の大多数は、「あー、すっきりした。」と満足感に満たされて、何回でも同じようなドラマを見るのです。これも一種の現実逃避でしょうね。

でも、このようなドラマの原作者、脚本家、監督などは少しはエリートのことがわかっていて、自分たちもなりたいと思っている人もいるでしょうから、誇張してエリートを悪者にするドラマを作らないだろう、と合理的に考えるかも知りません。しかし、多くのテレビ関係者は自分がエリートだと思っていないでしょうし、会社のよりエリート的な上司にペコペコし、政治家や高級官僚にたまに会えば、へつらわなければならないのです。ここに定番の筋のドラマの企画が会議項目にでも出れば、視聴率も高いし、大体いつもやっていることなので、製作費もあまりかからないので全員賛成でOKがすぐ出るのです。このような人たちは「今度はどういう風にエリートの貪欲さ、意地の汚さを描き、どんなひどい最期を遂げさせるかを考えるのが楽しい。」と意気込み、メーク、衣装係もエリートたちをいかにいやらしい、意地悪い姿にするか必死に考える。このように想像している私は相当歪んでいますかねー。

最近、歪んだ考えが延長してきています。この間まで、このようなドラマの筋書きは反体制の人たちの企てではないのか、このようなドラマを通して、現社会、経済、政治体制がいかに腐っているかを庶民に知らせ、革命でも起こすかーという気分を盛り上げることを狙っているかもしれないと思ったのです。しかし、もしかするとこれには少なくともも一つの裏があるのではと思い始めたのです。すなわち、逆にこれらは現体制を支持している人たちの企てかもしれない。昔のソ連、今のロシア、中国を見らば明らかなようにこれらの国では官僚が威張り、好き勝手をやって、汚職が蔓延している。これに比べれば、日本のエリートの悪行なんてかわいいものだ。共産主義などと言っている国でこそ悪事は横行している。この国が共産主義になって官僚の数が大幅に増え、かれらが今以上に威張り、汚職をし始めたら大変だろう、という深いメッセージがある。まー、いくらなんでも考えすぎですかね。この年になるとボケ防止のため、無理して頭を活動させている傾向があるかもしれません。

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