暴落!なにができるか?債権以外は?

株価の下落に備えポートフォリオを守るため手を打つことをヘッジング(Hedging)といいます。ポートフォリオに対しての保険と考えていいでしょう。いつ株が下落するかわからないのでいつもヘッジングをかけておく手と下落し始めたらヘッジングをかける手があるでしょう。もちろん突然株価の暴落が起こるような場合、前者のほうが効果が大きいのですが、下落、暴落が起こってからでも防御手段をとることは多くの場合無駄ではありません。ポートフォリオが5,6%落ちて「もーオレダメ!グチのバッグも結婚の夢も消え失せた。」とやけを起こさず、じっくりどこまで今回株価は下落するだろうか?インディケーターはどうなっているか?などを調べれば、まだまだヘッジングをする価値がある場合が多いのです。下落傾向に入ると長く下落が続く可能性が大きいので。前の記事で話した債権はヘッジングツールで一番よく使われているものでしょう。ただアメリカのマーケットには非常に多くのヘッジングツールがあります。私が実際使ったり、検討するものをいくつか紹介しましょう。

今回の暴落ではっきりしたことはそれぞれのヘッジングツールの効果は下落の大きさにより大きく違うということです。短期間で5%以内のそれほどひどくない株価下落では多くのツールが有効なのですが、10%以上の下落時には有効なツールは非常に少なくなります。ヘッジングの基本的な考え方は株価の動きと関係なくまたは逆に動くものを買っておき株価の下落から出る損を埋める、少なくとも小さくするというものです。ヘッジングの強さは簡単には株価との相関関係の大きさで決まります。つまり株価が下落したとき、せいぜい値段が変わらないというツールはヘッジング効果が弱く、大きく値が上がるツールは効果が高いのです。しかし問題は簡単ではないです。というのはツールの多くは株価との相関関係がコンスタントではないからです。債券のところである程度詳しく書きましたが、相関係数が正になったり負になったりするのが多いのです。

私が実際使ったりじっくり見ているツールをいくつかざっと効果が弱いのから強い順に挙げますと、Consumer Staples(石鹸、食料など日常生活に必要なものを扱っている会社の株)、Health(健康に関連した事業を行っている会社の株)、金、Utilities 株(電気、水など公共財を扱っている会社の株)、REITS(リート)、債券、プットオプション、空売りやプットオプションで構成されているETFなどです。

「なんだいろいろあるじゃないか。花が全然咲かないので、この際一番強いやつがいい。債券はジジイ臭いしセクシーじゃない。」と花咲さんは言いそうですね。セクシーさを投資に求めるのはあまり意味が分かりませんし、どうかと思いますが、まーいろいろな人がいますからいいでしょう。最近彼の友人が「ニヤリさんは相当うまくやっているみたい。彼を真似たら」と言われ、何を勘違いしたか、そういわれてから常に薄気味悪くニヤリ、ニヤリしていて今まで同情していた友人たちも気味悪がり、遠ざかるようになり、女にももっと持てなくなり焦っている花咲さんです。しかし花咲さんが好きな強いのはもちろん弱点もあるのです。(弱いのよりセクシーかもしれませんが。)例えば多くのオプションはTime Premiumといって時間の長さだけでの価値がその価格の大きな部分を占めています。すると時間が経つとこの価値が下がるので多くのオプションは中長期では下落傾向にあり、短期以外に使うのは危険です。このリストに挙げたもの以外もっと強いのもあります。オプションを使って寄りレベレッジを効かせたもので例えばSP500が10ポイント動くと30ポイント、3倍、うごくETFもあります。それと株価指標とつながっている先物(Futures)です。これらは変動が激しく、大きく資金を入れると胃潰瘍、不眠症になる確立が非常に高く、お勧めできません。こうなるともう保険ではなく、ギャンブル的なものになり、これらのツールにのめりこみ、何をやっているのかわからなくなる危険があります。

このように多くあるヘッジングツールはそれぞれを説明するのに多くの時間をさかなければならず、このマガジンの主旨と違ってくるので、ここではざっとしか書きません。上のヘッジングリストを見れば見えてくると思いますが、Consumer StaplesとHealth関連の会社の業績はあまり経済動向と関係ないのでツールになるのです。次の金は昔から危機からの逃避という役割をして株価の暴落時に上がる傾向があります。Utilities 、REITS, 債券は金利との相関が強いから入っています。オプションはあまりヘッジングツールといえないかもしれません。というのはオプションはヘッジするというより、積極的に株価の下落から儲けようという狙いがあるからです。しかしこれらは空売りと同じですから株価が下落すると確実に上がります。まー逆も言えるわけですが。ここに挙げたのはヘッジングツールのカテゴリーで、このカテゴリーの中に売買できる具体的な個々の会社などがあります。ただ同じカテゴリーの中にある会社の株ならどれでもいいとはいきません。これらの会社の株価の間の相関関係は一般的に相当高いですが、株価の動きが大きく違うものがいくらでもあるので、気を付けなければなりません。

注意してほしいのは上にあげた弱いやつも株価が5%以内に収まる下落時には効果があるのですが、それ以上の下落にはあまり効果がないという点です。私は一SP500の株価が大きく下落していて、金利が下がっているとき、なぜ配当が高いUtilitiesのような安全株も大きく下落するのか不思議でした。私の理解では理由はこれらが「株」だからです。暴落時には非常に多くの投資家がパニック状態になります。するとまー5%ぐらいの下落は想定内などと言ってせいぜいハイテク株や金融株を売りに出すのですが、パニック状態になると、坊主が憎けりゃ袈裟まで憎いではないですが、「株」という名のついたものが全部怖くなり、憎くなり全部売りに出すのだと思います。投資信託などのファンドのポートフォリオには普段はヘッジングツールとして効果のある安全株が含まれていることがありますが、ポートフォリオ全体を売りに出すと、安全株も売られるのです。これは当然理にかなったことではないのですが、実際には起こっています。”Don't throw the baby out with the bathwater"”(風呂の水と一緒に赤ん坊まで捨てるなとでも訳せますかね。日本ではちょっと汚いですが、「みそくそ」に当たりますかね。)という教訓がありますが暴落時のパニック状態では無視されるようです。この点「債券」が暴落時にもヘッジングとして有効なのは「株」ではないからです。ファンドでも債権は株とは普通別扱いになっています。

ここまで議論し、私の推測も交えた分析(あまりあてにならないかもしれませんが。)から結局債権が一番いいんじゃないかということになるかもしれません。確かに暴落時には一番いいかもしれません。でも別の記事で書きましたが、暴落はしょっちゅう起こるものではないのです。暴落時以外では弱いヘッジングツールも効果があり、配当も債権より高く(ものによってはTLTの倍以上)、また中長期では上昇率もTLTより高いのです。ですからこれらの弱いツールもポートフォリオに入れる価値があると思います。ちなみに私は株価の動向次第でポートフォリオは変えていますが、現在TLT,SH(SP500をショートしているETF),Utilities を多少持っています。SHはあまり長く持っているつもりはありません。(これを書いた後多少の利益を出したので売りました。2020/3/2には株価が大きくリバウンドしているので。ただまた下落基調になる可能性は高いので、SP500が下がり始めたらまた買うかもしれません。)今日の戻しのように大きくより大きい流れに逆らうような動きは多くの場合空売り解消(Short-covering) によっておこるものです。

この記事で暴落に関してのものは一時休憩します。今(2020/3/2)進行中の暴落(コロナ暴落とでも呼びましょうか)が一段落したら、コロナ暴落を分析してみましょう。次の記事では株をやるにあたってやってはいけないことを話します。




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