インプリンティング

いつか書こうと思って先延ばしにしていたのだけど、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を観て決心がついたのでレオナルド・ディカプリオについて書いてみることにする。


そもそものきっかけは今年(2023年)の2月に、期間限定で公開された『タイタニック』の3Dリマスター版だった。

上映時間が3時間を超える大作だが、なんとか2回観ることができた。
というのも、このリマスター版は全国的に大人気で満席続出という話が早い段階から話題になっていた。一回観た後でもう一回観たいと思っても、席を確保できないかもしれないと心配して、平日も含めて2日分のスケジュールを確保していたのだった。

鑑賞前は、「過去に観たこともある3時間もある作品を短期間に2回観たくなるだろうか?」とも思ったけれど、結果的にこの選択は大正解だった。というか、3回でも観れたと思う。

1回目はただただ圧倒されて時間が過ぎていき、2回目でようやく落ち着いてじっくりと観ることができた気がする。


そして、久しぶりに『タイタニック』を観て、こう思った。

──もしかして私のイケメン好きはレオナルド・ディカプリオから始まったのではないか、と。


私は自他共に認めるイケメン好きだ。
美人も好きなので、顔がきれいな人が好きというのが正しいかもしれない(ちなみに好みが結構偏っていて、THE美形 みたいな顔が好き)

私だって幼い頃は足が速かったりスポーツができたりする男子が好きだった。しかしどこかのタイミングでイケメン好きになっていた。

かのmixiという古のSNSには紹介文という機能があり、リアルな友人知人が私を他の人に紹介する説明文を書いてくれていたのだけど、「りおちゃんはイケメン好き」「顔がきれいな人が好き」と複数名に紹介文を書かれるくらい、自他共に認めるイケメン好きだ。
(私を知らない人に最初に伝える言葉が「イケメン好きな人」というのはどうかと思うが、間違ってはいないのでまぁいいかと思っていた)


とはいえ、これまでいつから自分はイケメンが好きだったのか考えたことがなかった。小学生の頃、友達が某アイドルグループにハマっていた時も、私は特にお気に入りのグループがなかったように思う。

しかし、今回リマスター版の『タイタニック』を観て、レオナルド・ディカプリオがあまりにかっこよすぎて、あまりに王子様すぎて、惚れ惚れしてしまった。数日経っても余韻が抜けず、なんなら数ヶ月経っても「タイタニック良かったなぁ」と思うほどだ。

そして、ふと思った。そうか、幼い私に影響を与えたのは彼なのかもしれないと。


『タイタニック』は1997年の上映時に劇場で観ている。年齢は伏せるが当時はまだ子どもだった。

私は映画館もない田舎の出身で、映画館で映画を観るには、映画1本分くらいの時間をかけて移動をして、映画より高い交通費を払わないといけなかった。しかし、誰がどういう経緯で作品を選択したのか全く覚えていないけれど、とにかくタイタニックは映画館で観ているのだ。

経緯はわからないが、確かなことがある。その時にレオ様に魅了された。

漫画好きだったのでお小遣いは漫画に消えることがほとんどだったのに、映画雑誌の『SCREEN』を購読するようになった。『タイタニック』の2本組のVHSは予約して買った(こっちは親に買ってもらった気がする)。『ロミオ+ジュリエット』も観たし、ディカプリオの出演作は可能な限りチェックした(とはいえ田舎なのでレンタルも充実していなくて観れないものが多かったけれど)

当時はブラット・ピットとディカプリオが映画スターとして日本でも人気だったように思うが私は断然レオ様派だった。

『SCREEN』を購入し始めて、いろいろ映画に興味を持つようになったから、今の自分がいるのだと思う。
当時は今ほど観ることはできなかったけど、それでも映画を観る頻度は増えた。そして一番注目していたのはレオ様だったように思う。

幼い時にあんなにも圧倒的な王子様に魅了されてしまったのだ。それが「かっこいい」の基準になってしまった。もうイケメン好きになっても仕方がないと思う。なんというか雛の刷り込み、インプリンティングに近いものだろう。

当時、世界中にレオ様のファンがいて、王子様な彼にメロメロだった。
かっこよくて、かわいくて、紳士で、スマートで、神々しささえ感じる。どんな良い男でも完璧に演じられると思う。それほどまでにタイタニックのジャックは圧倒的だった。

だからこそなのかもしれない。彼はそんな王子様なイメージを覆すような役を演じるようになった(と思う)。レオ様がどうしてそんな役を?と思い、観ていない作品もある。
世界中のファンを魅了する甘いマスクの役から距離を置いてしまったことは、私にとってはとても悲しいことだった。


2023年10月20日に公開された『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演、ロバート・デ・ニーロが共演の、上映時間が206分もあるこれまた超大作だ。

ディカプリオの自分への影響を認識した状態で今の彼を見てみたいと思い、観に行くことを決めた(こんな理由で監督などのファンの方には少し申し訳ない)


先に断っておくと、映画自体はとても良かったし、見応えのあるドラマだった(重い話だから楽しいとか面白いという感じではないけど)
満足しているし、これから書くのは決して作品への不満などではないということを先に記しておく。


ディカプリオの演じているのは王子様とは程遠いどうしようもない男だった。しかめっ面というか、口をへの字に曲げて顔に皺を寄せ、なんだか疲れた顔をしている。

実は、ディカプリオの登場シーンで私は涙ぐんでしまった。これは誰だと思った。あまりに違っていた。これが、あのジャックなのかと。
あの時の王子様の面影がもうどこにも見つけられなかった。もう王子様な彼を観ることはないのかと悲しくなったのだ。

これを観る前に観た作品が彼の出演作が『タイタニック』だったというのも良くなかったのかもしれない。作品が違うのだからイメージが違うのは当たり前だし、年齢だって違う。その役にぴったりの演技をしているのだから、何も間違っていない。

だけど、彼が生み出した王子様は今も自分に影響を与え続けているのに、その彼はもう存在していない。そういう作品を観ることはこの先ないかもしれない。引退したなどでもなく、映画俳優であるにも関わらず、だ。

そう思うと、とても寂しくて、初っ端で感情が大いに揺さぶられてしまった。これは自分でも少し驚くほどだった。

ここでも、タイタニックの自分への影響の大きさを再認識することとなった。


『キラーズ〜』鑑賞後に家に帰って、タイタニックを少しだけ観た(いつでもサッと観れるように配信版を購入してiPadにダウンロードしている)


王子様だった。とてつもなくかっこいい王子様だった。正装して、階段から降りてくるローズを迎えるシーンは完璧だと思う。



インプリンティング。

きっとずっとジャックに魅了されると思う。どこか呪縛のようなものにも感じる。だからこそ、もう一度だけ、甘いマスクの超絶イケメン役を観てみたいと願わずにはいられない。きっとハリウッドならなんでもできるでしょう?

観たって呪縛は解けるわけではないし、別に解きたいわけでもないけれど。


好きな映画を聞かれて悩むことが多かったが、この先、好きな映画を聞かれたら、自信を持って『タイタニック』と答えようと思う。

なぜならレオ様がとてつもなくかっこいいから。作品を好きな理由なんて、私にとってはそれで十分なのだ。

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