川崎ヘイト街宣へのカウンター - 2019年12月7日(土)/神奈川県川崎市
2019年12月7日(土)、神奈川県川崎市川崎区(JR川崎駅東口)で行なわれた差別扇動団体「日本第一党」の街宣に対するカウンターの記録
「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(差別根絶条例)が12月12日(木)に成立した。ヘイトスピーチに刑事罰を科す条例は全国初で、川崎市議会本会議の採決では全会一致で可決された。
この「ヘイトスピーチ規制条例」が成立するたった5日間前の川崎市では、ヘイトスピーチ集団が街宣を行っていた。彼らは条例制定の妨害を宣言し条例反対を訴えていたが、自分たちが活動すればするほどヘイトスピーチに関する法律や条例の制定を後押ししているという事実に気付くべきだ。
【動画】
2019.12.7川崎ヘイト街宣へのカウンター(5分5秒)
先日かかった肺炎で体力が落ちていたので、あまり走れず今回の映像には激しいカメラワークはほとんどなく、その代わりにパンを工夫した印象的な画を入れてみた。それでも可能な限り動き回っていたので、膝をつきハアハアと肩で息をしながら長回し撮影をしていた。また、当日は横浜で初雪が観測されたというくらいの寒さで、病み上がりの体にはこたえた。
【写真】
今回の街宣で日本第一党は「四畳半」と揶揄されるほどの狭さに押しやられていて、そこへカウンターによる正面と右側面からL字型の抗議が行われた。このように実際に差別主義者の居場所がなくなっていた。非常に愉快なことだ。
街宣の参加者は過去最少人数であったし、レイシストはこのまま消えてしまえばお互いに幸せになれると思う。
カウンターが掲げている「川崎市差別禁止条例成立まであと5日」「ヘイトスピーチ刑罰化 成立まで秒読み」「差別に負けないで ガンバレ川崎市」「ヘイトスピーチ罰則成立間近」などのプラカードが指し示すように、川崎市ではヘイトスピーチを繰り返す人物や団体に対して刑事罰を科す条例が成立しようとしていた。
これまで多くの人々の地道な行動でここまできたのは言うまでもない。レイシストが住みにくい街、川崎。とてもいい。
カウンターは過去7回、日本第一党(神奈川県本部)と川崎駅東口の街宣で対峙してきた。いつもは正面からの抗議しか行われてこなかったが、今回は右側面にカウンターのスペースができていた。
これまで神奈川県警察は鉄柵をあらかじめ設置して街宣スペースを作りレイシストをそこへ案内し、抗議するスペースもその正面に設けるという方法をとってきた。また駅方面からバス停などへアクセスするルートの一つも街宣場所の横を通る為、完全に封鎖するという過剰な警備体制が敷かれていた。
今回、街宣場所の周りに鉄柵は前もって設置されておらず、道の封鎖も行われていなかった。写真のような状態になったのは、抗議が始まってからのことだ。警察は「差別禁止条例」が成立する目前で差別団体の肩を持つようなことをしたくなかったというのは、読みとして的外れだろうか。
レイシストの側面にカウンターのスペースができてしまったのは、警察にとっては誤算だったようで排除しきれずL字型の抗議になった。その為、最初からその場にいたカウンターしか右側面のスペースにいることができず、新たにそちらに行くことは禁止されていて、右側面カウンターと正面カウンターの間には鉄柵が設置されていた。私が現場に到着した頃には既に鉄柵と大量の警察官が配備されていた。
右側面スペースへの入り方はとてもシンプルで、鉄柵のそばにいる警察官がよそ見をしている瞬間を見計いジャンプして飛び越えた。「右翼の人はよく鉄柵を飛び越えてるよ」という話を聞いたことがあって、やればできることは知っていた。しかし、私は大量の機材を持っていて総重量は10kgを超える。そんな状態で大丈夫かと思ったが、ちょっと助走つけてジャンプしてみたら侵入に成功した。
鉄柵を飛び越えた瞬間、周りの警察官は驚き一瞬ざわついたが、しれっと奥へ逃げたらお咎めもなかった。警察が勝手に入ってはいけないと言ってるだけで、悪いことをしたわけではないから怒られる理由もない。しかし、その右側面スペースから出してもらう時には、「もう入ってこないでね」と軽く注意された。
KAWASAKI AGAINST RACISM !!!
【警察装備品コラム001:警察の雨装備】
午前中から川崎には雨が降っていた。その為、警備を行っていた神奈川県警察機動隊は白色のカッパ(正式名称「雨衣第一種」)を着用していた。
実は制服の警察官は傘をさしてはいけないので、雨の日はカッパを着ている。その根拠となるのが以下の規則・規程で、身に着けてよいものが事細かに決められている。
傘の使用が認められていないのは、持つと手が塞がってしまい行動が阻害されてしまうというのが一番大きい理由だろう。片手が使えないと任務に支障が出るというのは理解できる。
雨というものはグラデーションがある。降るか降らないかではなく、降りそうだったり、降ってから止むなど、簡単に割り切れるものではない。雨が降りそうだけど今はカッパ着る必要がないという時は、袋に入ったカッパを手に持って任務に当たる。なので何か起きたらカッパ袋をその辺にぽいっと投げて行動に移る。カウンターの撮影中、何度も放置されたカッパ袋を目撃したことがあるが、なくなってしまわないか心配だった。
もう一点カッパのデメリットがある。当然ながらカッパを着ると制服の胸にある階級章が隠れてしまう。縦割り組織である警察にとって、階級章が見えなくなってしまうことは非常に不都合で不便なのだ。序列がわからなくなると指揮統制の確立が困難となり、誰の指示を聞いていいのかわからなくなり任務に支障が出る。
この日は、「制帽:指揮官&付き人(指揮する側)」「活動帽:それ以外(指揮される側)」という被っている帽子で区別されていた。指揮官は「指揮棒」と呼ばれるカラフルな紐が付いた白い棒を持っているのだが、常に高く掲げているわけではない。警部以上の制帽には金線が入っているし、活動帽の後頭部には階級章がついているが、帽子の違いという分かりやすい目印も用いたのだろう。
複数の部隊が混じって警備を行う際は、帽子の種類を変えたり色違いの反射ベストを着用したり、部隊ごとに微妙に違った装備にして区別ができるようにしていることが多い。大規模警備になると、ビブス(チームスポーツで使用するカラフルなノースリーブウェア)を着用している場合もある。
雨の日の警察ウォッチポイントは、見えない階級章をどうやってわかるようにしているかである。