世田谷区は障がい者の助成を切るなサウンドデモVol.2 - 2020年9月28日(月)/東京都世田谷
2020年9月28日(月)、東京都世田谷区で行われた『世田谷区は障がい者の助成を切るなサウンドデモ Vol.2』の記録
世田谷区・障害福祉部(障害施策推進課)は、新型コロナウイルス感染症の影響で税収が減ることを理由に、「来年(2021年)度の障害者団体等に対するバス助成事業を休止することを含め検討する」という通知を対象団体に対して発出した。
世田谷区が行う保健福祉事業の中に『世田谷区障害者(児)福祉団体等バス派遣事業』という、障がい者の外出等の社会参加の機会を増やすことを目的として、障害者福祉団体等が行事で使うバス費用を助成してくれる制度がある。この事業がコロナの影響で廃止されるかもしれないということで抗議の声があがっている。
バス派遣事業対象団体の代表らは、世田谷区に対し、「感染拡大の中、なんとか命をつないでいる障害者や高齢者などに対し、世田谷区財政の逼迫を理由に福祉予算等の大幅な削減を行うというのは、弱者を切り捨てる悪政と言うしかありません。税収減の補填先を福祉予算等の大幅な削減に求めるのではなく、多額の税金が使われる「区庁舎の建て替え」の延期等をまず実行すべきです」など、強い抗議の姿勢を意見書として提出した。
そんな中、ハードコアパンクの介助従事者たちは、世田谷区の障害者福祉予算削減に抗議するべく、世田谷区役所へのサウンドデモを再び企画した。前回9月7日のデモと同様に、区役所の開庁時間に合わせ平日昼の時間帯に行進を実施することとなった。
荷台にバンドを乗せたトラックとデモ参加者は、小田急電鉄小田原線の梅ヶ丘駅北口すぐにある世田谷区立羽根木公園(はらっぱ広場)を出発し、サウンドを響かせ「世田谷区は助成金を切るな!」などのシュプレヒコールをあげながら、世田谷区役所までの約1.5kmを行進した。ゴール地点の世田谷区役所前では、保坂展人区長のいる部屋および障害施策推進課に向かって抗議の声をあげた。
第1回目のデモは機材トラブルでバンド演奏が叶わなかったが、今回はBlack AthetoseとForwardがライブを行い、障がい者問題を訴え世田谷区の福祉削減に爆音で抗議した。
【動画】
世田谷区は障がい者の助成を切るなサウンドデモ Vol.2 - 2020.9.28 東京都世田谷(32分58秒)
【写真】
時間通りに羽根木公園に集合し、デモ出発を待つ参加者たち。前回のデモは2時間遅れで出発するという大失態をやらかしたので、世田谷警察署も警備を増員し時間厳守を励行させた。
サウンドカーに乗車しているのは、Black Athetose(ブラック・アテトーゼ)のメンバーだ。このデモの主催で重度障がい者のフミ a.k.a. 社長さんがヴォーカルを務めているハードコアバンドが一番手として出演した。
午後2時、世田谷区役所へ向けてデモは定刻に出発した。閑静な赤堤通りに重低音が鳴り響き、叫び声がこだました。
Black Athetose ベーシストNORIさん スピーチ
新庁舎に500億ですって、500億。
我々がもらってたのは1年に70万くらいですね。
それを切ろうとしてまで、新庁舎を建てたいっていうのはもうホントに社民党が自民党の恫喝に負けたとしか思えないんですが、今日は保坂区長を目当てに、そして第一庁舎の3階に障害施策推進課があるので、そこに向けて抗議の声をあげたいと思います。
その助成制度というのはですね、世田谷区独自の制度でですね、これもみんな、障がい者の先輩たちが勝ち取ってきた制度です。
そういうものから真っ先に切っていこうという意図が見え見えでしてね。これは全国に波及する流れだと思っています。
生活保護を切る。年金を切る。そういった新自由主義のやり方の一つの流れとして、福祉を削って、ゼネコンやそういった自治系のほうに金を落とそうという、そういった仕組みの中のホントにローカルなイシューですが、我々にとってですね、介助者と障がい者、障がい者同士、介助者同士、そういった人たちが仲良くなれるチャンスなんてほとんどないんですよ。
それをですね、年に1回のバス旅行で仲良くなって、実際僕はそうなんですけど、「介助やらしてくれ」とか、「これから介助に入ってよ」とか、そういう大切な交流の場を作ってくれてた制度なんですね。
その制度にお金を割いてくれてた世田谷区には、これまで感謝してましたけど、ここまできたらですね、抗議の声をあげざるをえない。このままいくと緊急介護人派遣という区の制度も切られていくかもしれません。
それから国へどんどん波及して、介護保険一本化、障害者制度と一緒にして、それで予算を抑えていこうという流れの一つだと思ってます。
DJロベルト吉野さん。機材トラブルのためプレイはなく、マイクを握り抗議のシュプレヒコールをあげた。
Forward ヴォーカリストISHIYAさん スピーチ-1
お騒がせしております。世田谷区のみなさま。私たち、ハードコアパンクスでございます。
保坂さんはそんな区長だとは思いませんでした。
世田谷区長、保坂展人さんは区庁舎を500億円かけて建て直すのに、障がい者のバス助成金をカットして、そういうことしようとしています。
自民党と違う区長さんだと思ってました。ただ、今あなたがやってること同じですよ。ゼネコンを儲けさせて、弱者を切り捨てて、世田谷モデルってそういうのですか。
世田谷モデルってそうなのか。
世田谷区のみなさん、心あるみなさん。どうか、明日は自分のことだと思ってください。今日あなたがなるかもしれない。明日あなたがなるかもしれない。
障がい者だって健常者だって同じ人間だ。同じ人間だよ。同じ人間だ。
俺たちみんな同じ人間です。仲良くしちゃいけないんですかね。
そのためには、公助が必要なんですよ。
自助は、すげえやってますよ俺たち。自助も共助もやってます。
それじゃあ、保坂さんは自民党と同じじゃないですか。違う人じゃないんですか。
ハードコアパンクバンドForwardの演奏が続く区役所西通り。ヴォーカルのISHIYAさんが時に歌い、語り、抗議のシュプレヒコールを張り上げた。
世田谷区役所前に差し掛かり、一段とヒートアップするサウンドデモの参加者の面々。庁舎に向かってシュプレヒコールをあげた。
Forward ヴォーカリストISHIYAさん スピーチ-2(世田谷区役所前)
500億いるか? 500億いるか?
保坂展人、500億いるのか? てめえ、自民党のやり方と一緒じゃねえか。この野郎。頭くんだよ。頭によぉ。
怒らすな、障がい者と介助者を。舐めんな、障がい者と介助者を。
舐めんな、ふざけんなこの野郎。
お前らの無関心が人を殺すんだよ。俺たちは絶対生きるけどな。
障がい者が施設で必要ないとされた。命の重さは永遠同じ、なにも変わらない。
わかる? わかる? おんなじ。あんたの命も俺の命も社長の命もユージさんの命も全部おんなじ。
ひとつ、ひとつ、ひとつ、ひとつ、ひとつ、ひとつ、俺たちには生きる権利があるんだよ。わかる?世田谷区役所のみなさん、わかる?
世田谷区、世田谷区、障がい者のバス助成金を切るな。受け入れる勇気。手に取る勇気。見つめる勇気。認める勇気。勇気あるか?
世田谷区のみなさん、勇気あるか? 勇気あるなら変えようぜ。
500億円はいらねえだろ。500億円はいらねえだろ、この庁舎建て直すのに。500億円だぞ。障がい者はないがしろか。障がい者の楽しみを奪って、区庁舎の建て替えか、500億かけて。ふざけんんじゃねえ、この野郎。
1億でいいよ、よこせよ年間。よこせよ。499億にしろよ。あんたら知ってる? 区庁舎の立て直しに500億かかるんだって。500億。
500億だよ。やってること自民党と一緒じゃん。箱物建てて、障がい者切り捨てて、保坂さんてそんな人じゃなかったじゃないの。俺信じてたけどね。
そんな人だったんだ。がっかり、涙が出ます。
一人ぐらい良い政治家がいるかと思ってたがよ。おんなじじゃねーか、自民党と。何にも変わんねえよ。
なにが世田谷モデルだよ。世田谷モデル、じゃあ、弱者を切り捨てて、区庁舎を建て直すのか。世田谷モデルがよ、ふざけんなこの野郎。
知ってるか、もう俺たちにはよ、愛しか残されてねえんだよ。愛し合う以外に何か方法があんなら教えてくれ。愛し合おうぜ、憎しみ合うな。なあ、みんな。
保坂展人、降りてこい。見ろ、俺たちを。見ろ。500億円なんかいらねえ。
この区庁舎建て直すのに500億円使って、障がい者の助成金70万円すらもカットしようとしてるのね。
500億円のうち、70万円カットして、どうしようっていうの?
で、区庁舎の建て替えに500億円。500億円。障がい者のバス助成金70万円。どう思いますか?
あんたたちに聞きます。じゃあ、答えを自分なりに見つけて、探し出して、出してください。よろしくお願いします。
【おまけ:飛んでいたヘリコプターについて】
警視庁航空隊のヘリコプター「はやぶさ2号」(ユーロコプターEC135)が、集合場所の羽根木公園の上空を旋回していた。デモが出発してからは見かけることがなかったので、公園周辺の情報収集活動が任務だったのかもしれない。
便宜的にヘリコプターと表記したが、正式には「警察用航空機」と呼称されていて、警視庁では本部(地域部)の航空隊に所属している。規程によると、航空機の派遣を必要とする場合は所属長が地域部長に要請することになっている。
所轄警察署の署長も所属長ではあるが、署長がヘリ要請のような大袈裟なことをするようには思えない。こんな小規模なデモに空の目をわざわざ投入する必要があったのだろうか。
コロナ禍で街頭行動が激減し、警備予算が削減されることを恐れた警備部あるいは公安部が要請したという説はどうだろうか。警察もお役所なので予算消化という考えが存在している。ただ、民間機をチャーターするなら費用がとてもかかりそうだが、所有している航空機を飛行させるのにはそれほどの費用はかからないようにも思える。
しかし、公園の上空を警視庁のヘリコプターが旋回していたのは事実なので、確実に誰かが航空機の要請を行ったのだ。答えが出るような類のものではないが、気になったのでここに記しておく。
【資料】
2世障施第500号
令和2年7月15日
世田谷区障害者(児)福祉団体等バス派遣事業対象団体 代表者様
世田谷区障害福祉部障害施策推進課長 太田一郎
「新型コロナウイルス感染症の影響下における世田谷区障害者(児)福祉団体等バス派遣事業の取扱いについて」
平素より、世田谷区の障害者福祉施策にご理解ご協力をいただき、厚くお礼申し上げます。
さて、新型コロナウイルス感染症においては、国の緊急事態宣言が解除された一方で終息に至らず第2波、第3波なども想定されており、都内でも感染者数の増加に伴い、他府県への移動自粛要請が出されている状況です。また、世田谷区内の陽性者数も増加傾向にあります。
当バス派遣事業においては、事業の性質上、観光バス内における集団感染や、他府県への移動による感染拡大のリスクが高く、徹底した感染防止対策を講じることが困難と考えております。
また、当区の財政状況においても、新型コロナウイルス感染症の影響により税収が大幅に減る見込みであり、来年度の予算編成にあたりましても非常に厳しい状況であることから、全庁的に事務事業の休止や先送り、事業規模の縮小等の見直しが求められております。
以上の状況を踏まえ、世田谷区障害者(児)福祉団体等バス派遣事業につきましては、令和2年度は感染リスクが引き続き高いことから控えていただくとともに、令和3年度は今後の感染状況や区全体の動向を踏まえ、休止を含めて検討することにしております。
大変ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解くださいますようよろしくお願いいたします。
【担当】障害施策推進課 管理係 遠藤・櫻井
世田谷区障害者福祉団体連絡協議会による世田谷区障害福祉部障害施策推進課への意見書
「新型コロナウイルス感染拡大による区の財政新規逼迫を理由とした福祉予算等の削減について」
世田谷区長は8月4日日本記者クラブで会見し、「いつでも、どこでも、何度でも」というアメリカのニューヨーク州でやっているPCR検査を「世田谷モデル」として目指したいと発言した。
新型コロナウイルス感染拡大の出口が見当たらない東京都において、他区に先駆け「世田谷モデル」を提案したことで、マスコミや福祉関係者からも評価する声があがっている。
しかしその一方で、新型コロナウイルス感染拡大による税収の落ち込みなどによる世田谷区財政の福迫を理由に、令和3年度福祉予算等の大幅な削減や事業の休止を検討しているとの情報があります。
事実すでに世田谷区障害者(児)福祉団体等バス派遣事業対象団体に対し、税収が減ることを理由として、令和3年度の助成を休止することを含め検討するという通知が出されています。
新型コロナウイルス感染拡大による影響は、全国民的問題でありますが、障害者や高齢者などは、これまでも大変な思いをして生活してきました。その上、感染拡大の中、なんとか命をつないでいる障害者や高齢者などに対し、世田谷区財政の逼迫を理由に福祉予算等の大幅な削減を行うというのは、弱者を切り捨てる悪政と言うしかありません。
税収減の補填先を福祉予算等の大幅な削減に求めるのではなく、多額の税金が使われる「区庁舎の建て替え」の延期等をまず実行すべきです。
世田谷区保健福祉総合事業概要<総合編> 令和2年度版
(第3章 障害者保健福祉 15. その他)
バス派遣
【事業の開始】昭和61年4月
【窓口・所管】障害福祉部障害施策推進課管理係
【事業の概要、目的】障害者(児)福祉団体等の実施する行事(研修会、講演会、機能等の回復訓練及び相談会等)の活動にバスを派遣する。これにより、障害者(児)の外出等の社会参加の機会を増やす。
【根拠法令等】世田谷区障害者(児)福祉団体等バス派遣事業運営要綱
【対象】要綱別表に掲げる団体
【事業の実績】派遣団体数12団体
【予算】[歳出]4,060,000円
【決算】[歳入]特定財源なし [歳出]2,720,000円
世田谷区障害者(児)福祉団体等バス派遣事業運営要綱
第1条 この要綱は、障害者(児)福祉団体等の実施する行事等の活動に予算の範囲内で、バスを派遣する事業を適正かつ円滑に執行するため必要な事項を定め、もって障害者(児)等の自立更生を援助し、福祉の増進を図ることを目的とする。
第2条 バスの派遣を受けることができる障害者(児)福祉団体等は、別表に掲げる団体等で、次条各号に定める活動においてバスの利用を必要とするものとする。
第4条 区長は、前条に規定する障害者(児)福祉団体等が、次の各号に掲げる活動を行う場合、次条に定めるバス利用年間計画書の内容を審査のうえ、バスを派遣することができる。
(1) 研修会、講演会、機能等の回復訓練及び相談会を実施するとき。
(2) 地域住民との交流会を実施するとき。
(3) 障害者(児)等の自立更生を目的とした他の団体等の行事又は催事に参加するとき。
(4) その他前号に類似した事業で、区長が必要と認めたとき。
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