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この世界は残酷だ。

8冊目

この世界は残酷だ。それでも君は確かに、自分で選ぶことができる。

この言葉から始まり、この言葉で終わる本。

苦しかったときの話をしようかを読みました。

 USJを奇跡のV字回復させた森岡氏が、就活生の娘さんに向けて書き溜めていた文章の棚卸しであり、自身のキャリアに関する独白でもある本なのですが、読者に語りかけているようなリアリティと文章力で思わず引き込まれました。

特に、本のタイトルにもなっている第5章「苦しかったときの話をしようか」は、一つの小説として読んでも面白いくらい印象的なエピソードでした。以下は冒頭の1ページです。

 人はどういうときに最も苦しいのか? それは、働いて働いて、死ぬほど忙しいときでは決してない。会社や上司や周囲の評価が厳しいときは、辛いのは間違いないけれども、それも最も苦しいときではない。人が最も苦しいのは、自己評価が極端に低くなっているとき。自分自身で自分の存在価値を疑う状況に追い込まれたときだ。周囲の塩評価も、自分で自分を疑い始める導入に過ぎない。自分の価値を強く疑うとき、人は臆病になり、行動できなくなる。ガソリンが枯渇した車が動かないように、最低限の自信がないと人間も動けない。周囲と比較して自分ができないことが積み重なると、劣等感がどんどんハイライトされてくる。理想とのギャップから徐々に重くなってくる焦燥感や、周囲の期待に応えられないときに刺すように冷たい無力感。これらは自己肯定感を容赦なくどんどん削ってくる。
 そんな自己評価が極限にまで下がった時期が、私にも何度もあったことを話しておきたい。

 読み進めると、P&Gでの活躍からUSJの事業再生と輝かしい経歴を持つ筆者にも、会社に行きたくなくて布団にくるまっていた地獄の時間があったことなどが分かりますが、読みながら思わず目頭が熱くなりました。

 また、最後に、とても心に響く言葉があったので、自分のためにも紹介します。死ぬときに後悔しないための意思決定系の話です。

第6章「自分の弱さとどう向き合うのか?」

p271-272

 真剣に考えて欲しい。「何も失敗しなかった人生……」。死ぬ寸前に自分がそう呟いて天寿を全うする場面を想像して欲しい。それで本当に悔いなくあの世に逝けるのか? 何も失敗しなかったことは、何も挑戦しなかったに等しい。それはかけがえのない一生において、何もしようとしなかったということ。それは 臆病者の人生の無駄遣い そのものだろう!  失敗しない人生そのものが、最悪の大失敗ではないのか? 

人は何をしていても、何もしなくても、どうせいつかは死ぬ。どうせ死ぬのだから、何かに挑戦することを怖がる必要なんてない。むしろ許された時間の中で、やりたいことをやらないと大損だろうに……。

だから、不安に逆毛立ってビビるような挑戦に立ち向かっている君は素晴らしいのだ!
痛いのも不安なのも、生きている証拠だ。そんなとき、君はその瞬間を、生きているのだ。

物理的に生きていても、実際は生きているか死んでいるかわからないような人が山ほどいる

そんな中で、君は勇敢にも安全なテリトリーを踏み出して、命を燃やしながら何かに挑戦しようとしているということだ! その道を自ら選べたなら、自信を持っていい。君の勇気と知性は共に健在なのだから。


追記

 p58-66 あたりの「学校では教えてくれない資本主義の仕組み」にも良いことが書かれていました。

資本主義とは、無知であることと、愚かであることに、罰金を科す社会のことである。



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