台本「ゆるして」

ミサ「ねえ」
ユキ「…」

ユキは俯いている。

ミサ「ねえってば」
ユキ「ミサ…」
ミサ「なに?」
ユキ「ねえ、ミサ…僕、あのときのこと後悔してるんだ」
ミサ「あのとき…?」
ユキ「僕が、あのとき感情的にならなければミサは…ミサは!!」

ユキは立ち上がるが、ハッとして座り直す。泣いている。

ミサ「ユキ…?」
ユキ「なんて…もう遅いよね…」
ミサ「なにが遅いの?私が…どうしたの!?」

ミサはユキに触れようとするが、触れられない。

ミサ「え…?」

アオイが入ってくる

アオイ「ユキ…まだそこにいたの?」
ユキ「あ、アオイ…まあ、その…うん」
アオイ「ミサのことは…もう忘れた方がいいんじゃない?」
ミサ「え…?」
ユキ「そ、そんなことできないよ!だって…」
アオイ「なんで…」
ユキ「だって…僕のせいなんだ…ミサが」

大きな物音に声がかき消される。

アオイ「うわっなんだろ…ごめんね、ちょっと見てくる」
ユキ「うん…」
ミサ「ねえ、ユキ…アオイは何言ってるのそれに…」

ふとミサが後ろを向くとそこには仏壇がある。置かれている写真はミサのもの。

ミサ「どういう…こと…?」
ミサ「わ、私死んだの!?ねえ、ユキ…!」

ユキが仏壇のほうに振り向く

ユキ「ミサ…ごめん…ミサを殺したのは…僕だ…」
ミサ「ゆ、ユキ?」

ここからはユキの一人語り

ユキ「みんなはただの事故だと思ってるし、もしかしたらミサもそう思ってるかもしれないけど…あのとき、僕が少し手を伸ばしてミサのことを車から引っ張り出していれば…僕はそれがわかってたけど、ね、ミサ。僕はミサより劣ってた。双子なのにね。それがいつも嫌で嫌で嫌で堪らなかったんだ…だから、見殺しにしたんだ…」

ミサは崩れ落ちる

ミサ「ユキ…ああ…思い出した…自動車事故…ユキは車から出れたけど…私は…シートベルトが取れなくて…やっと取れてもう少しってところで車が燃え始めて…足がすくんで動けなくなった…ああ、あああああああ…」

アオイが入ってくる

アオイ「ごめん、お待たせ…」
ユキ「ううん、大丈夫」
アオイ「それで…」
ミサ「やめて、あれは、ユキのせいじゃない。あんな風に炎が燃え始めたら足がすくむ。足がすくんで助けられても助けられなくなる」
ユキ「僕が…」
ミサ「やめて…ねえ…」

ミサはユキに縋りつこうとする。先程同様縋り付けない

ユキ「なんでもない…ただ忘れられないんだよ」
ミサ「よかった…」
アオイ「そう…でも、いつかは立ち直らなきゃいけないの、わかってるでしょ?」
ユキ「うん」
アオイ「もう少しで母さんたちも帰ってくるし、ご飯だからいつまでもそこにいないでね。辛そうなユキを見てると…私たち、辛いのよ」
ユキ「うん、ごめん…」

アオイがはける
ユキはもう一度仏壇の方を見る

ユキ「ねえ、ミサ。僕絶対ミサのことを忘れないし、ミサの分も生きるよ。毎日ミサにいろんな話をするし…だから、許してくれる?見殺しにした僕のこと」
ミサ「許すよ…許すから…私のこと忘れて幸せに生きてよ…」

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メモ帳をあさっていたら出てきた台本です。

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鈴宮縁
貧乏芸大生のバイト時間を減らしてあげてください……