【和訳】 Nora Guthrie - Home Before Dark ノラ・ガスリー「暗くなるまえに」
ノラ・ガスリー「暗くなるまえに」
月のある夕べ
またここにきている
どうやらわたしたち
ほんとうにいい友達になれそう
《蛍》、覚えているでしょう
あなたを自由にしてあげられる
たったひとりの
わたしのこと
どうしてわたし立ち尽くしているのだろう
ここは公園
暗くなるまえに
家に帰るはずだったのに
きっと待っているのだろう
夕暮れがその歌をくちずさむころ
そばで一緒に歩いてくれるひとを
もう遅い時間
やがて犬が吠えはじめ
たぶん走れば
家に帰れる
暗くなるまえに
たぶん走れば
家に帰れる
暗くなるまえに
──
Nora Guthrie - Home Before Dark
Evening moon
Here I am again
Guess it seems like we′re
Becoming real good friends
Lightning bug
You remember me
I'm the only one
Who′ll ever
Set you free
Why do I linger here
In the park?
When I'm supposed to be
Home before dark?
I guess I'm waiting for
A boy to come along
Who′ll walk with me while ′round us
The evening hums it's song
Guess it′s late
Now the dog will bark
Maybe if I run
I'll get home before dark
Maybe if I run
I′ll get home
Before dark
──
6月に開催される「青花の会|骨董祭」の案内状をかねた図録に、参加する古美術商それぞれが好きな音楽を挙げてひとこと寄せるアンケートのようなページがあった。そのなかであまり自分と歳の離れていない店の方がノラ・ガスリー「Home Before Dark」について書いていた。
懐かしくなって自分の店で彼女の曲を流していると(といっても全部で2曲しか残されていないのだが)、音楽好きの同世代の常連さんがこれ好きなんですよね、と声をかけてくれた。ノラ・ガスリーというのは、たとえばソフトロックやサイケ、インディペンデントなシンガーソングライターなどを丹念に聞き進めているとどこかで出会う名前なのだと思う。そして誰もがそれを聞くや、胸の底の方へ隠すようにしてあまり話題にあげることもない、そんな態度がいかにも似合う音楽なのだ。「Home Before Dark」を聞いていると、まるで心につくられた旧い暗渠をのぞき込むようで、不思議なほど胸を締め付けられる。
ノラ・ガスリーは、ボブ・ディランが憧れたアメリカのフォーク・シンガー、ウディ・ガスリーの実娘。1967年に発表した7インチシングル『Emily's Illness』のB面がこの「Home Before Dark」である。その後いかなる音源も出ていない。ノラは自分で曲を書くことはしなかったようで、両曲とも当時恋人だったエリック・アイズナーのペンによるものであるらしい。「Emily's Illness」のいわゆるBlackadder Chordだったり、「Home Before Dark」の鬱期ジョアン・ジルベルトを先取りしたような和声感覚といい、非凡だと思う。アイズナーはあのフィフス・アヴェニュー・バンドの前身であるザ・ストレンジャーズのメンバーとしてドラムを演奏していたという。コロンビア大学を出てからは法曹界で活躍したようで、現在そちらの業績を中心にWikipediaで立項されている。
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