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0から1−たった1分で読める1分小説−

「裕太君のパパは凄いよな。有名人だし、お金もたくさん稼いでるし」
 裕太と一緒に下校中、隼人がうらやましがった。

 裕太の父親は人気漫画家で、その作品をみんなが読んでいた。
 裕太が、ヨッとランドセルを持ち直した。
「有名人でお金持ちだからという理由で、僕はパパを尊敬してないな」
「なんで?」

「パパは頭と手を使って、0から1を作ってる。その部分を尊敬してる」
 ハアと隼人が感心する。裕太は頭がいいのだ。

 隼人は帰宅すると、父親に訴えた。
「ねえ、パパはなんで整体師なんかやってるの。漫画家みたいな仕事してよ」
 父親が誇らしげに返した。
「整体師も立派な仕事だぞ」
 先ほどの裕太との話をすると、父親がにやりと言った。
「明日、裕太君とうちの店に来い」

 言われたとおり、二人で父親の整体院を訪れた。ちょうどお客さんを治療中だ。
「ずいぶんO脚ですね。矯正させてもらいます」
 父親がそう言い、隼人が裕太に尋ねた。
「O脚って何?」
「脚が外側にカーブしてる状態だよ。両脚を合わせるとOに見えるだろ」
 さすが裕太だ。なんでも知っている。

 ただ父親の仕事を見学しただけで、二人は帰らされた。隼人は意味がわからなかった。
「うちのパパも裕太君のパパみたいに、クリエィティブで0から1の仕事をして欲しいよ」
「裕太君のパパも0から1の仕事してるよ」
「どこが?」

「O脚をまっすぐにして、1の形にしてたじゃないか」


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浜口倫太郎 作家
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