赤い糸−たった1分で読める1分小説−
「ありがとう。美樹のおかげで和信君と付き合えたわ」
紀香が美樹に礼を言う。「どういたしまして」と美樹が目を細めた。
和信とは紀香の彼氏で、美樹が紹介したのだ。
「でもどうして和信君と私の相性がぴったりだと思ったの」
「なんとなくよ、なんとなく」
美樹は、恋人同士の小指と小指を結ぶ赤い糸が見える。和信と紀香にはそれがあった。
「ほんと和信君って素敵なのよ。ねえ、聞いてる?」
紀香があまりにのろけるので、美樹はいらだった。そこでいたずら心で、紀香の赤い糸を切ってみた。
紀香が冷めた顔で言った。
「和信と別れるわ……」
糸の切り口から、ドクドクと赤い液体が漏れ出ている。何これ? 美樹はあわてて糸を結んだが、液体は一向に止まらない。
「私に任せてください。あなたは席を外してください」
見知らぬ男があらわれ、美樹は困惑しながらも外に出た。あたりは時間が止まっている……。
男は、恋の天使だった。
「もう大丈夫です」
男が声をかけたので中に入ると、糸が直っていた。
「よかった……」
美樹が胸をなでおろした。
「どうやって直されたんですか。結んでもダメだったのに」
「よく勘違いされますが、あれは糸ではありません」
確かに変な液体が漏れていた。
「天使でも学校を出て免許を取得した者にしか修復できません」
「なんの免許ですか?」
「医師免許です。血管縫合術で、二人を繋ぐ恋の血管を縫合したのです」
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