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ライバル−たった1分で読める1分小説−

「貫太郎、俺はおまえを必ず越えるからな」
 それが秀夫の口癖だった。

 貫太郎と秀夫は、幼い頃からの友達だった。
 貫太郎は成績優秀で、スポーツも万能だった。秀夫は、そんな貫太郎に何かと張り合おうとした。ただ優秀な貫太郎にはいつも敵わない。そのたびに歯をギリギリと鳴らし、地団駄を踏んで悔しがるのだ。

 貫太郎は秀夫が好きだが、その強烈なライバル視だけは閉口していた。

 貫太郎は大手商社に勤めると、あるビジネスのアイデアを閃いた。
 それはすべての商品を百円均一で売るという店だ。店名は『百円市』だ。
 貫太郎は商社を辞めて起業した。大変な苦労はしたものの、百円市は大成功を収めた。

 社長室にいると、久しぶりに秀夫が訪ねてきた。
「百円市凄いじゃないか」
 秀夫がにこやかに褒め、貫太郎は違和感がした。

 貫太郎が何かを成し遂げると、秀夫はいつも苦虫を噛みしめたような顔をするのに……。
「貫太郎、宣言通り俺はおまえを越えたぞ」
 秀夫は声高らかにそう言い、部屋を出て行った。

 数日後、秘書があらわれた。
 貫太郎は、秀夫の現状を秘書に調べさせた。
 秀夫の身なりや佇まいから、成功したようにはとても見えなかったからだ。

「秀夫様は小さな店を経営されてます。ですが赤字続きで倒産寸前です」
 それでどうして自信満々でいたのだ?
「一体なんの店だ?」

「すべての商品を三百円で売る店、店名は『三百円市』です」


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