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人間両替機ーたった1分で読める1分小説ー

「これが人間両替機ですか?」
 隆宏が見上げると、そこには巨大な装置があった。

「はい。これであなたを両替できます」
 博士が、得意そうにうなずいた。

「一万円札を千円札十枚に両替するように、あなたの分身を十人作れます。ただし、能力も十分の一になります。この装置は優秀な方が時間を節約するために使用されます。簡単な作業ならば分身でことたります」

 隆宏は優秀ではない。会社では役立たずと評判だ。だったら能力を十分の一にしてもっと役立たずになり、みんなに迷惑をかけてやる。

 そんな嫌がらせ目的で、人間両替機をやることにしたのだ。

 両替をして、隆宏は分身を作った。その分身が会社から帰ってきた。
「どうだ。みんなにこっぴどく怒られただろ?」
「いや、いつもと同じだったよ」

 分身の答えに、隆宏は首をひねったが、はたと気づいた。
 みんなが言うほど、隆宏は無能ではないのだ。なぜならば能力が十分の一になっても、不都合がなかったのだから。

 それを博士に報告すると、博士が不可解な顔をした。
「……妙だな。よかったらあなたの価格を査定させてもらえませんか?」
 隆宏が装置の中に入ると、横からレシートのような紙が出てきた。

 博士がそれを見て、合点するように言った。
「わかりました。能力が十分の一になっても問題がなかった理由が」
「なんだったんですか?」

「あなたの人間としての価格は0円です。だから両替しても0円になるわけで……」



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