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同窓会−1分で読める1分小説−

 中学校の同窓会で、教師の丸井が挨拶をした。
「あれからもう三十年も経ちましたね。もう私も教師を辞めて、今は家でゆっくりしています」

 かつて教え子だった、コウタが声をかけてきた。
「先生、僕のこと覚えていますか?」
「ごめん……思い出せないわ」
「そうですか……」

 コウタがしゅんとすると、ゲンジがグッと割りこんできた。
「先生、オレは覚えてるか!」
「覚えてる、覚えてる。君はほんとやんちゃで、手がかかったもんねえ」
 ゲンジは学校一の不良で、暴力事件を幾度も起こし、丸井も何度も警察に呼び出された。

「不思議だけど、手がかかる生徒ほど覚えてるのよねえ」
「まあオレはやんちゃしてたかんよ。でも今はまっとうにやってっから」
 なにがまっとうだ……コウタは心の中でつぶやいた。学生時代、コウタはゲンジにイジメられていた。

「じゃあ今日のメインイベントを始めようか」
 丸井の合図で、他の生徒達がゲンジをはがいじめし、椅子にくくりつけた。
「なっ、何すんだ!?」
 ゲンジが動揺すると、丸井がナイフをとりだした。
「あなたには私もここにいるみんなも迷惑をかけられたからね。私が代わりに復讐をしようと思ってね」

 この同窓会は、丸井がみんなに呼びかけたのだ。
「もう私も老い先短い。後悔をあの世に持っていきたくない。クズを世に放った不始末は、自分でとらないとね」
「やめろ、やめろ!」

 暴れるゲンジの胸を、丸井がナイフで刺した。


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浜口倫太郎 作家
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